ソフトバンク中村晃外野手(34)が今季初スタメンで大仕事を果たした。

「6番一塁」で先発出場。同点の8回1死一、二塁で決勝の右前適時打を放った。昨季までチームメートだった西武の2番手、甲斐野の151キロを打ち砕いて2連勝に貢献。代打待機が続いていた男の一振りで、チームは今季最多タイの貯金「4」。がっちりと首位の座を固めた。

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球場全体が固唾(かたず)をのんで、その時を見守った。1-1の8回1死一、二塁。打席には今季初スタメンの中村晃。マウンドにはFA加入した山川の人的補償で西武に移籍した元チームメート、甲斐野がいる。試合の明暗を分けた真剣勝負は、中村晃に軍配が上がった。

「いいピッチャーなので、しっかり集中していけた。(甲斐野とは)試合前も話はしました。でも勝負なので。そこは一切、切り離していけたかなと思います」

甲斐野が投じた2球目、151キロをとらえた。打球は右前に弾み、二塁走者の川村がホームに激走。右翼手からの返球で、微妙なタイミングだったが、川村が間一髪でセーフをもぎとった。中村晃は「頼むからセーフであってくれと。川村のすごい走塁で助けられました」。決勝点をもぎとった後輩の好走塁に最敬礼。試合が決まった。

前日11日まで開幕11試合全て代打待機だった。山川の加入も影響し、14年に最多安打、昨季までは4年連続でゴールデングラブ賞を受賞したベテランが、ベンチで戦況を見つめる日々が続いた。山川がDHで出場し、巡ってきたスタメンで「打撃職人」が大仕事。「せっかくチャンスをいただいたので、結果出せたらいいなと思いましたし、何より勝ちたいなと思ってました」。決勝打の場面は「勝負どころなので、ちょっと代打っぽいイメージで」とここぞでギアを上げた。「絶対に勝つ、と。相手もライオンズで、今乗っているチームだったので。何とか初戦を取れればいいなと思ってました」。ヒーローはいつも通り、冷静にバスに乗り込んだ。

起用した小久保監督も「ね。今シーズン初スタメンでね。さすがです」とうなずいた。チームは移動ゲームながら2連勝を飾り、貯金は今季最多タイ「4」となった。「いいゲームができましたので、明日も勝ちたいと思います」。プロ17年目、中村晃で首位の座を固めた。【只松憲】