昨秋、栗山英樹監督は大忙しだった。

代表監督としてではなく、大自然で暮らす1人の人間として。「ネズミにかじられないようにね。全部、巻いたよ」。名字が同じ縁で北海道・栗山町に住む。町の人たちと力を合わせて開いた「栗の樹ファーム」は、天然芝の球場とともに緑にあふれている。昨年5月、新たに100本の栗の苗木を植えた。1本1本に動物よけのす巻きを施した。冬の間、餌代わりにかじられないように。

苗木はドラマ「北の国から」で知られる脚本家の倉本聰氏から贈られた。日本ハム監督を10年率い、北海道を盛り上げてくれたことへの感謝だった。その1本を、ファームの入り口脇に植えた。贈り主への敬意を込めて「聰師栗木」の看板とともに。

栗山監督 北海道の恩人である倉本先生の木を守りたい。あと20年もたったら、ものすごい栗の実がなるんだ。その頃、僕は死んでるかもしれないけど、この辺の子どもたちが栗を楽しめると思ったら。すごくうれしい。先輩からの魂を次の世代に伝えていく。野球だけじゃない。使命であると思う。

世界一に挑む姿を、野球少年のみならず多くの子どもたちに届けた。栗の木もまた、未来へのメッセージだ。【古川真弥】

◆栗山英樹(くりやま・ひでき)1961年(昭36)4月26日、東京都生まれ。創価高-東京学芸大。83年ドラフト外でヤクルト入団。プロ1年目秋に両打ち転向、3年目に打率3割1厘。89年に外野手でゴールデングラブ賞。通算494試合、7本塁打、67打点、打率2割7分9厘。90年に引退後はスポーツキャスター、大学教授などを務め、12年から日本ハム監督。12年リーグ優勝、16年日本一。21年11月、日本代表監督就任。現役時は174センチ、72キロ。右投げ両打ち。

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