エース復権を目指す棚橋弘至(38)が、次代のスター、飯伏幸太(33)の前に立ちはだかった。Aブロック屈指の好カードとなった初のシングル対決。死力を尽くした20分を超す激闘を、ハイフライフロー2連発で制し、白星発進した。

 ベルトを持っていなくても、今年上半期に低迷していても棚橋は、棚橋だった。飯伏との戦いは、攻守がめまぐるしく入れ替わった。飯伏の驚異の粘りに、観客の地鳴りのような足踏みと、大声援はいつしか飯伏へ傾きかけていた。それをはね返すだけの力が棚橋にはあった。

 20分過ぎ、飯伏の掌底をかわしながら、後ろに回ってドラゴンスープレックス。そこから、ハイフライフロー2連発で勝負を決めた。20分53秒。人気復活で、大会規模も過去最大となった今大会。今や世界中が注目するG1開幕戦のメーンを、最高の試合内容で締めくくった。

 試合後のリング上で、倒れ込む飯伏に「またな」とだけ声をかけた。握手や抱擁はなくとも、エースと、次代のエースにはこのひと言で十分だった。棚橋を「神」とあがめ、プロレス人生の目標にする飯伏の言葉を聞き、試合開始直前までどう戦うかを考えていたという。「最後まで悩んだけど、いつも通り全力で試合をすることだと、直前に答えが出た」と棚橋は言った。相撲界で横綱が、次期横綱をつくるために全力で壁になるように、棚橋も全力で飯伏に立ち向かった。

 昨年のG1で痛めた首が悪化し、左手は現在もしびれている。飯伏から首を攻撃され、再び痛めた。それでも、試合後はリング上でエアギターのパフォーマンス。引き揚げる際も、客席から投げ入れられるタオルで汗を拭き、それを返すサービスを何回も続けた。こういった努力の積み重ねが、人気回復の原動力になっている。飯伏が棚橋を神とあがめるのも、極限の試合をこなしたあとでも、ファンサービスを欠かさない強さがあるからだ。

 「毎回優勝宣言していますが、ずっとかなわなかった。そろそろ自分が優勝する番です。有言実行します」。エースがエースであるために、07年以来のG1優勝は欠かせない。【桝田朗】