2敗で“大混戦場所”を引っ張る大関貴景勝(24=千賀ノ浦)が、霧馬山を厳しい攻めで下し、2敗の首位を堅守した。取組後、今場所初めてリモート取材に応じ、出場最高位として場所を引き締める思いを明かした。2敗勢は相星対決以外は全員が勝利。9日目を終えて6人がトップを並走するのは、6人の1敗勢が先頭を走った00年九州場所以来20年ぶりの混戦となっている。

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前日の黒星も、先場所の黒星も、貴景勝は引きずらなかった。左のはず押しで霧馬山を吹っ飛ばすと、反撃の隙を与えずに6・3秒で押し出し。「(前日の取組は)終わったこと。後悔しないような相撲をと思ってやった」。8日目は栃ノ心の変化に対応できず2敗目。連敗を避けたいこの日は、初顔だった先場所で敗れた相手だったが、厳しい攻めで不安を一蹴した。

“無言”に深い理由はなかった。初日から報道陣のリモート取材には応じず国技館を引き揚げていたが、勝ち越しを目の前にして初めて取材に応じた。リモート取材では支度部屋から出てきた力士を、日本相撲協会の広報職員が画面越しで報道陣が待つパソコンに誘導する形式。取材に応じるかは力士の自由という中で「自分も勘違いして、リモートの要領を分かっていなかった。帰り道にこういう感じと分かった」。10日目以降も取材に応じるか問われると「もちろんです」と力強くうなずいた。

看板力士としての責任を果たす。2敗で首位の6人を、4人の3敗勢が追う大混戦。両横綱の休場で、最高位として賜杯争いを引っ張る役割が求められる中で「結果残すことがそういうことにつながっていく。あまり考えずに集中していく」と平常心を強調した。

今場所から使用する黒い締め込みは、昨年の大関昇進時にもらったもの。「気持ちを新たに、新たなスタートとして変えた」。心機一転の大関が、快勝で後半戦を滑り出した。【佐藤礼征】

▼八角理事長(元横綱北勝海) 貴景勝は冷静に対処した。立ち合いに集中していたのだろう。優勝争いを引っ張ってほしい。朝乃山は(栃ノ心の変化に)よく残った。大関相撲だ。正代の相撲(そのもの)は、かち上げからの勢いだけの感じだが精神的に15日間、安定し気力が充実している。