大相撲の元幕内大喜鵬で、19年秋場所限りで引退した山口雅弘さん(34)が3日、東京・両国国技館で断髪式を行った。

約230人がはさみを入れ、師匠の宮城野親方(元横綱白鵬)の止めバサミで、まげと別れを告げた。途中「大相撲に入る前からずっと憧れだった」という、元大関豪栄道の武隈親方にはさみを入れられると号泣。そこから涙が止まらないような状態となり、弟弟子の炎鵬、日大時代の同期の間垣親方(元幕内石浦)らがはさみを入れると、さらに号泣した。

宮城野親方が現役時代にスカウトした最初の内弟子が山口さんだったが、相次ぐ病気、ケガで師匠よりも先に引退した。それでも師匠の断髪を待って4年越しでこの日を迎えた。「選んだ道に後悔はない」と涙だけではなく、明るい性格らしく満面の笑みも随所に見せていた。整髪を終えて新しい髪形になると、圭央(けいな)夫人(32)に「めっちゃカッコイイ!」と言われ、照れ笑い。長男の白禄くん(5)、次男の玄禮くん(3)に、とびきりの笑顔を見せて胸を張っていた。

断髪式の最中は「ずっとフワフワした気持ちだった。はさみを入れてくださった1人1人の方との思い出が、ページがめくれていくような、映画を見ているような感覚だった」という。実は入場の時点から涙ぐんでいた。宮城野親方の後ろから入場するのを待つ間に「師匠が現役の時の、優勝パレードで旗手を務めた時のような感覚だった。師匠の背中があって、現役に戻ったようでジーンときた」と、さまざまな思い出がよみがえっていた。

今後は宮城野部屋のコーチと、奈良県内で今月オープンのちゃんこ店経営など実業家を掛け持ちする。宮城野親方は「1度(幕下以下に)落ちて、そこから戻った経験は誰でもできることではない。その経験を生かしてほしい」と、あきらめない気持ちの強さを、弟弟子に伝えていくことを期待した。宮城野親方にとっても、止めバサミを入れるのは初めての経験。「最初が山口というのが不思議な縁を感じる」と話し、思い入れの強い弟子であり弟弟子の労をねぎらっていた。【高田文太】