宝塚歌劇団の元星組トップスター、柚希礼音(ゆずき・れおん=38)が2日、大阪市内で、来年明けに東京、大阪で、ヒロインを演じるミュージカル「マタ・ハリ」取材会を開いた。

 歌手で俳優の加藤和樹(33)とダブル主演となるミュージカルは、16年に韓国で世界初演されたフランク・ワイルドホーン氏の最新作。柚希は「ワイルドホーンさんの楽曲は全曲、ドラマチック。曲数も数えられないぐらい多いですし、どんどん(自身のキーが)男役時代から上がって、今回、歌げいこ後には毎回、地声まで上がってます」と格闘ぶりを明かした。

 ワイルドホーン氏は、宝塚でも再演が重ねられる「スカーレット・ピンパーネル」も手がけており、楽曲で役柄の心情を表現する繊細な曲作りで知られる。柚希も星組時代の08年、同作の中でトップへの“出世役”とされるショー・ブラン役を演じている。

 15年5月の退団から2年半、女優へ転身し「裏声も使うようになって、最初はかすれてしか出なかった音が出るようになり、作品ごとに自分のキーが上がっていった」というが、今回はさらに難易度が高いという。「歌のけいこをした帰りには、話し声まで高くなって、あれ? いつ(元の声に)戻るのかなって思っています」と語った。

 柚希は退団後の同作韓国版を「プライベートでたまたま」観劇しており、その時点では「まだ男役目線が抜けていなくて、(男性役の)ラドゥーがいいなって。机をバーンッてたたく場面がかっこいい、あれやりたいと思っていた」そう。

 今回、自身がヒロイン役に決まり、見直したところ「任務で近づいてきたと知らず運命を感じ、でも、真実を知って…という女性の悲しみに心を打たれ…。本名を隠してまで生きて、強い意志があるマタ・ハリって、実はすごくピュアなんじゃないか」と、その魅力を再発見した。

 そのマタ・ハリといえば、屈指のダンサーでもあり、ダンス場面も肝になる。日本版では「陰のダンサーとか使わずに、自分でやります」。劇団時代から歴代トップの中でも屈指のダンサーとして活躍し、「レジェンド」と呼ばれる存在感を誇ってきただけに「せっかくなので、私、踊らせてもらおうと」と話した。

 退団2年半を振り返り「ジーパンでも、ボーイッシュなのをはいてましたが、今は細身のものを。最初は『女性はこんな、ピチピチのものをはくのか』とびっくりしましたけど、細身(のデニム)に変えると、あわせてトップスも、昔のメンズっぽいのは合わなくなった」。私服でも、ゆるやかに女性への変化を自らが実感している。

 今作は、柚希がヒロインのマタ・ハリを演じ、彼女の運命の鍵を握るフランス人大佐ラドゥーとその部下アルマンを、加藤和樹が日替わりで務め、ラドゥー、アルマンそれぞれのダブルキャスト佐藤隆紀、東啓介が配役されている。

 公演は来年1月21日開幕(28日まで)の大阪・梅田芸術劇場からスタート。宝塚時代には何度も主演に立った劇場から新年を始めることになり、柚希は「ほっとするというか、幸せです」と話していた。

 東京国際フォーラム公演は同2月3~18日。