俳優成田凌(26)が、第32回日刊スポーツ映画大賞・石原裕次郎賞(日刊スポーツ新聞社主催、石原プロモーション協賛)の石原裕次郎新人賞に輝いた。「愛がなんだ」「さよならくちびる」「翔んで埼玉」など5作品に出演した。主演男優賞は池松壮亮(29)主演女優賞は松岡茉優(24)石原裕次郎賞は「アルキメデスの大戦」(山崎貴監督)が受賞。授賞式は28日、東京・紀尾井町のホテルニューオータニで行われ、裕次郎夫人の石原まき子さんから成田に賞金100万円、「アルキメデス-」には300万円が贈られる。

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今年の出演公開作は、今回の映画賞対象期間だけで5本に上り、スクリーンを彩り続けた。「胸を張っておもしろいと思える作品に出させていただいて、こうして賞をいただけて少しホッとしています」と胸をなでおろした。

裕次郎さんについては「写真や映像で見ている方という印象」と話しつつ「一緒に作ってくれた方々や、見ていただいた皆さんのおかげです。ありがたいです」と喜んだ。

5作品、それぞれに思い入れがある。「チワワちゃん」は「同世代の役者たち、同世代の二宮健監督と一緒に仕事ができることはあまりない。その勢いや、今しかできないことが凝縮されていると思います」。

埼玉出身で、地元をテーマにした「翔んで埼玉」は「もし出ていなかったら、埼玉県人としてはすごく悔やまれましたよね」。女性デュオのマネジャー役を演じた「さよならくちびる」は、「これまで演じた役の中でも最も難しい役柄だった」といい「自分の足りないところを痛いほど感じ続けた。割と苦しかったんですけど、完成して、こういう映画に出たかったとあらためて思ったので、すごく良かったです」と話す。

デビュー当時はワークショップに通い、「いつか一緒に仕事をしよう」と誓い合っていた今泉力哉監督(38)とは「愛がなんだ」で念願の初タッグ。「すごくおもしろい人で、やっと一緒にできました。監督の作品には、これからもずっと出たいです」。「人間失格-」では、あるシーンの撮影前日に、小栗旬(36)と部屋でせりふ合わせをしたという。「なかなかないこと。あの太宰を演じる小栗さんを近くで見られたのは、今後大切な財産になると思います」。

常に挑戦し、吸収し続ける。「これまでは、言葉ではない何かをもらってばかりいたので、何かを与えられる役者になりたいと思います」。理想は、役者デビュー作のドラマ「FLASHBACK」で共演した故津川雅彦さんだという。くしくも裕次郎さんの初主演映画「狂った果実」で共演したのが津川さんだった。「何も分からない時に、『僕の目を見ていて』って言われたんです。いつか、そんなことを言える人になりたいです」とまっすぐ前を向いた。【大友陽平】

◆さよならくちびる 解散を決めた音楽ユニットのハル(門脇麦)とレオ(小松菜奈)はシマ(成田)と複雑な感情を抱え全国ツアーに。塩田明彦監督。

◆人間失格 太宰治と3人の女たち 正妻美知子のほか静子、富栄と関係を持つ太宰治。妻の言葉が「人間失格」の執筆へと駆り立てる。蜷川実花監督。

◆翔んで埼玉 結納のため都内に移動する埼玉在住の菅原一家。ラジオから流れてきたのは都市伝説「埼玉解放戦線」麻美麗の物語だった。武内英樹監督。

◆愛がなんだ テルコはマモル(成田)一筋も、マモルにとっては都合のいい女。マモルと連絡がとれなくなったテルコは…。今泉力哉監督。

◆チワワちゃん 「チワワ」の愛称で親しまれていた女性が遺体で発見。仲間たちは彼女の本名も知らずに一緒にいたことが明らかに。二宮健監督。

◆石原裕次郎新人賞◆ 裕次郎さんをほうふつとさせる将来性豊かな映画デビュー5年以内の新人が対象。賞金100万円。選出ハードルは高く、該当者なしの年も多く、32回目の今回で16人目の選出。

▽石原裕次郎新人賞・選考経過 「立ち姿がいい。『惡の華』でダメ男を見事に演じた」(伊藤さとり氏)という伊藤健太郎への意見や、「大物感がある。来年はきっと主演男優賞の有力候補にもなる」(石飛徳樹氏)と、成田のめざましい最近の活躍に触れる意見も。1回目で成田が過半数獲得。

◆成田凌(なりた・りょう)1993年(平5)11月22日、埼玉県生まれ。14年にドラマ「FLASHBACK」で俳優デビュー。ドラマは「逃げるは恥だが役に立つ」「コード・ブルー-ドクターヘリ緊急救命-3rd season」など。映画は「カツベン!」(13日公開)で初主演。来年も「弥生、三月-君を愛した30年-」「糸」「窮鼠はチーズの夢を見る」など公開作が続く。182センチ。血液型O。