女優でモデルの岡本多緒(41)が今年のカンヌ映画祭で最優秀女優賞を獲得した。ダブル受賞となった仏女優ビルジニー・エフィラと共同主演した「急に具合が悪くなる」(濱口竜介監督)での演技が評価された。
舞い上がっても良さそうなものだが、帰国会見では「現実味がわいておりません。一生わくことはないんじゃないかな」と淡々と話した。パリやニューヨークでトップモデルとして活躍しながら、この人にはどこか奥ゆかしいところがある、と改めて思った。
まだ20代だった13年前、映画「ウルヴァリン:SAMURAI」でハリウッドデビューを果たした直後にインタビューする機会があった。
177センチの高身長に小さな顔が乗ったモデル体形。近寄りがたいオーラがあった。14歳でモデルデビュー、華やかな世界に身を置いて10年あまりが経過していた。が、最初に口を突いたのは中学時代に抱いたコンプレックスだった。
「中学生になった頃、174センチありました。どうして人と違う形に生まれてきたのか。ほかの女の子と同じように女性として見られたい。スタートラインに立つためにはこれしかありませんでした。モデルでいないと一人前じゃないと。それでずっとやってきた気がします。本当は裏方で創作的な仕事がしたかった」
トップモデルになるまでは、実は10年近い下積みもあった。
「パリコレに出るのがゴールみたいに思っていたんですけど、そこからが長かった。ヨーロッパとニューヨークを行き来しながら、ひたすら(下積みの)モデルとして、あてがわれた衣装でステージに立ち続けるのってけっこうしんどいんです」
ブレークのきっかけは09年、長髪から思い切ってマッシュルームカットにしたことが「TAOヘアー」として注目された。広告への起用が増え、トップデザイナーからの指名が相次いだ。
「ショートヘアが流行り、中国経済が膨らんでアジアの女性にスポットが当たったことが大きかったと思います」と自身の躍進を周辺環境のおかげとするところが彼女らしかった。
「ウルヴァリンー」では、ヒュー・ジャックマンらと共演。演技が認められた。
「ルックス以外で初めて認められたのが一番うれしかった。7カ月の撮影期間、集団で1つのものを作る楽しさも実感しました」と心中を明かした。
こんなことも言っていた。
「『ウルヴァリンー』はせっかくのチャンス。身長がこれだから、なかなかオファーが来ないかもしれませんが、ヒューマンな作品にも出させていただきたい、と願ってます」
濱口監督の「急に具合が悪くなる」は、まさにそんな願いをかなえる作品だったと思う。受賞の感想を冷静に語る裏側で、実は「ウルヴァリンー」以来の大きな喜びをかみしめていたはずだ。【相原斎】



