縁ある北の大地で飛躍を誓う。今回の「ケイバラプソディー~楽しい競馬~」は、初勝利を目指すルーキー石田拓郎騎手(18=新開)を、東京の阿部泰斉(たいせい)記者が取材した。騎乗技術を磨くために函館滞在中の同騎手は、母が函館出身。以前は毎年のように帰省していた場所で、今は馬にまたがる。第2の故郷には1勝を届けたい人たちがいる。

函館での初勝利を目指す石田騎手(撮影・阿部泰斉)
函館での初勝利を目指す石田騎手(撮影・阿部泰斉)

この場所で挙げる初勝利に意味がある。騎手として初めて訪れている函館競馬場。茨城県出身の石田騎手はどこか懐かしそうだった。「小学校4年生くらいまでですかね。毎年2週間は函館に来てました。お母さんのふるさとなんです」。五稜郭タワーやラッキーピエロのハンバーガー。楽しい記憶は大切な思い出だ。そしてこの地には待望の1勝を届けたい人がいる。

大好きなおじいちゃんとおばあちゃん。小さい頃の帰省では、2人に会うのが楽しみだった。騎手として訪れた今、胸を躍らせる。「もしかすると祖母が競馬を見に来られるかもしれないんです」。祖父は体調の関係で自宅を出ることが難しい。祖母も外出する際には親戚の車での送り迎えが必要で、タイミングがかみ合わなければ見に来ることが出来ない。だからこそ、チャンスは絶対に逃したくない。

勝利のプレゼントを贈るために、週中の調教には積極的な姿勢があった。調教の合間を見つけては、先輩騎手にアドバイスを求める。11日に騎乗した馬と以前までコンビを組んでいた44歳の勝浦騎手に、馬の特徴を尋ねていた。「やっぱり聞いて確認することが一番早いと思うので」。デビューから3カ月がすぎ、自身の騎乗技術に満足出来ないところがある。たとえ26歳上の先輩であっても、おじけづくことはない。貪欲な姿勢で1勝への近道を探っている。

開幕週は土日で2鞍に騎乗して10着、12着。JRA38戦を消化して初勝利はまたお預けになった。それでも第2の故郷で実戦を経験できたのは大きかった。「何としても勝ちたい、という思いが強くなりました」。祖母は機会が合わず、競馬場観戦は今週以降に持ち越しになった。その時こそはと決意を胸に秘める。開催前に母の実家に顔を出し、祖父と祖母からもらった言葉がある。「とにかく体に気をつけてね」。身を案ずる言葉に闘志が燃えた。18歳のルーキーの表情には、だんだんとたくましさが見え始めている。

◆石田拓郎(いしだ・たくろう)2005年(平17)1月20日、茨城県生まれ。小学5年から乗馬クラブに所属。目標とする騎手は菅原明良。刺し身などの海鮮料理は苦手で、函館に来ても食べたことはほとんどない。JRA38戦で最高着順は5月21日新潟1Rのブーバーでの2着。159・9センチ、47・1キロ。血液型B。

◆今年のJRA新人騎手 石田拓郎、河原田菜々、小林勝太、小林美駒(みく)、佐藤翔馬、田口貫太の6人。3月のデビュー後、JRAで勝利を挙げたのは4人。田口7勝、小林勝3勝、河原田2勝、小林美1勝。

(ニッカンスポーツ・コム/競馬コラム「ケイバ・ラプソディー ~楽しい競馬~」)