【夏場所こぼれ話 初日~8日目】勝敗が変わらなければ確認の物言いは付けなくていい
2026年の大相撲夏場所は、小結若隆景の25場所ぶり優勝で幕を閉じました。
2横綱2大関が休場するなど、波乱の場所でもありました。
当欄では、取材の裏側などを「こぼれ話」としてお伝えします。
まずは、初日から8日目までの「前編」です。
大相撲
休場者とリセール
初日
初日から大の里関と安青錦関が休場となった。この情報は、2日前の取組編成会議の時点で確定。直後から、チケットのリセールが、そこそこの枚数出たという。そのリセールで初日のチケットを入手したいう人にも出会った。横綱大関の休場は残念だが、それで観戦を取りやめる人がいるとは意外に感じた。
この2日前、チケット問題について担当の浜風親方(元幕内五城楼)に聞いた。力士や親方は、買いたいチケットを事前に申し込めるが、以前よりも申し込み数が増えているため、制限をしているという。ある関取からも、数年前なら申し込んだ分をすべて買うことができたが、最近はその限りでないという話を聞いた。一般の人たちから団体の申し込みは増えており、さらに当選しにくい倍率になっているとのことだった。
15日間の懸賞総本数が4241本となり、1場所の最多記録を更新した。新規の申し込み企業数は最多30社となった。このため、取組表に載った字が、ものすごく小さい。「老眼では読めない」との声も聞こえてきたが、角界にとっては喜ばしいことかもしれない。
懸賞はいわゆる広告・宣伝なので、埋もれてしまっては意味がない。にしたんクリニックを運営するエクスコムグローバルは、幕内全取組に5本ずつ懸賞をかける。豪快なアイデアだ。
このまま増え続けたら、取組表はどうなってしまうのだろう。
午前11時から、相撲博物館にて親方トークショー。三保ケ関親方(元幕内栃栄)と竹縄親方(元関脇栃乃洋)が出演した。この2人、説明が難しい関係性にある。年齢は竹縄親方の方が1学年上。しかし、入門順では、埼玉栄高から入った三保ケ関親方の方が、拓殖大から入った竹縄親方より、3年早い。角界では年齢に関係なく、入門が早いほうが兄弟子となる。そのため、大卒の新弟子が、16歳の兄弟子に敬語で話していることもよくある。
ただし入門前の関係性によっては、事情が変わる。埼玉栄高時代、三保ケ関親方は拓大に出稽古に行っていたため、竹縄親方はあこがれの存在だった。そのため、入門当初は「後藤先輩」と呼んでいた。するとある兄弟子から「お前の方が先輩なんだから、『先輩』と呼ぶな」と言われた。「後藤くん」と呼び名を変えたが、今度は「くん付けなんかするな」と言われ、困った末に会話をやめたという。
竹縄親方は1年もたたずに十両に昇進すると、三保ケ関親方は付け人についた。そこでやっと「洋関(なだぜき)」と呼べるようになり、会話ができるようになった。今はお互い、気の置けない関係になっているという。
行司さんの控え室で、式守勘太夫さんを取材。実は2日前に、国技館の前で偶然、勘太夫さんに会った。その時、今場所から着る新しい装束ができたことを教えてくれた。
行司部屋では、実物を見せてもらった。カワセミの刺繍が美しい。「実際に触ってみてくださいよ」と言っていただき、カワセミに触れる。その凹凸感から、職人の手作業の素晴らしさを実感する。なかなか伝わりにくいが、立体感が分かるように接写した。
初日の大きなトピックスは、炎鵬関の3年ぶり十両復帰。炎鵬関にとって宮城野部屋時代からの兄弟子だった間垣親方(元幕内石浦)と、同じく首痛で苦しんできた湊川親方(元大関貴景勝)に話を聞いた。2人とも炎鵬関とはしっかりした関係性があり、貴重な話をいただいた。どちらも聞きながら感動した。
初日ということもあり、新に審判部に配属された2人に取材した。元幕内千代の国の佐ノ山親方は「緊張感ある1日。学ぶことばかりでした。審判の方々のすごさが分かりました。あの場所でマイクで説明するのもすごいこと。濃い1日でした」。
審判部長となった尾上親方(元小結浜ノ嶋)は「久々の雰囲気を味わえた。巡業とは違う緊張感がある」。この日、尾上親方が審判長に入った幕内前半戦は、物言いがつくような際どい相撲はなかった。「きっちり勝負が決まった。下で(物言いがついた時の)想定をしていたんですけどね。多分、3キロやせた」とプレッシャーがあることを明かしていた。この2日後、判断に迷う場面が来るとは想像していなかった。
結びの一番で、豊昇龍関が負傷。車椅子で診療所へ。今場所はどうなってしまうのか。
安青錦関は休場だが、「安青錦弁当」は今場所新発売。新しく相撲担当記者になった山田遼太郎記者に食リポをお願いした。マジメで一生懸命やる記者です。みなさま、どうぞよろしくお願いします。
せいご盛りにガリはなし
2日目
大嶽親方(元幕内玉飛鳥)と千賀ノ浦親方(元幕内里山)のトークショーから取材開始。大嶽親方は新十両の場所で、白星と黒星を初日から千秋楽まで繰り返し、8勝7敗で勝ち越した。○●○●○…と勝ち負けが続くことを角界の隠語で「ヌケヌケ」と言うが、NHKの放送ではNGだという。丁と半が連続する賭博用語であることが理由。賭博が由来であることは知っていたが、放送NGとは知らなかった。
後日、元NHKの藤井康生さん、吉田賢さんにこのことについて聞いた。放送禁止用語というほど強いNGではないが、使うのは望ましくないというニュアンスだそうだ。「ヌケヌケと言っても、視聴者の方が分からないという事情もありますよね」と言っていた。
名古屋場所担当の2人からは、次の場所の情報も少し出た。サブアリーナでは、愛知県出身の横綱玉の海関の記念品などの展示を予定しているとのこと。
ランチは2階売店で買った「せいご盛り」。今場所からの新商品で、マグロ、エンガワなど藤ノ川関の好きなネタが入っている。藤ノ川関が好みではないため、ガリは入っていない。私は入っていて欲しかったが、こういう突っ込みどころがあるストーリーは好きだ。
翠富士関が今場所初白星。春場所は「心不全」で全休しただけに、心配している人がとても多い。この日は勝ったが、いつも通りにひょうひょうとしていた。「普通に喜んでますよ。よっしゃーって喜ぶタイプじゃないんで」。6種類くらいの薬を飲みながら土俵に立っているが、悲壮感を感じさせないところが翠富士関らしいところでもある。
心配していた通り、豊昇龍関は休場となってしまった。
5月11日は峰崎親方(元幕内三杉磯)の70歳誕生日。今場所限りで退職になる。この日に合わせて記事を出した。峰崎親方は、相撲の神様を祀る野見宿禰神社を管理してきた。
北勝富士と大喜翔の縁
3日目
前相撲が始まった。雷親方(元小結垣添)が審判に入った土俵で、長男の垣添さんが初土俵を踏んだ。
垣添さんにとって、国技館の土俵に立つのは父の引退相撲以来だという。
そういえば、当時の玄空(はるく)少年はマゲを結って、父と最後の一番を取っていた。当社のデータベースを調べると、当時の写真を発見した。
午前11時からの親方トークショーは、桐山親方(元関脇宝富士)。「幕下以下の注目力士は?」との質問に、夢之富士さんを挙げていた。「18歳で幕下にいて、8場所連続勝ち越し中。性格はのほほんとしていますが、相撲は力強い。もっと意識したら関取になると思います」。
愛猫の話をされていたので、トークショーの後に猫ちゃんの写真をいただいて記事にした。
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1996年入社。特別編集委員室所属。これまでオリンピック、サッカー、大相撲などの取材を担当してきました。X(旧ツイッター)のアカウント@ichiro_SUMOで大相撲情報を発信中。著書に「稽古場物語」「関取になれなかった男たち」(いずれもベースボール・マガジン社)があります。
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