フットボール金融論 ~レアル・マドリードMBA卒・酒井浩之~

Jクラブ放映権分配収入増えれば使い道も変化する

「メッシ狂騒曲」とも言えた1カ月が過ぎました。生え抜きのスーパースターのクラブ退団騒動が全世界のフットボール関係者の注目の的となりましたが、現在のコロナ騒動で最も注目すべきは各クラブ・リーグの収入面の変化であると思います。

バルセロナFWメッシ(2020年6月撮影)
バルセロナFWメッシ(2020年6月撮影)

ビッグクラブの収益の約20~30%を占めており、中堅クラブではその割合は約50%に、そして下位クラブでは80%近い収益を占める放映権とその分配益。このコロナ騒動でリーグ戦が中断した際には、放映権の支払いにストップがかかるというような報道がなされ、当然それに対してクラブ、リーグはあせり、なかば無理矢理シーズンを再開するような形になった感は否めませんでした。もしシーズン再開がなされなければ先に述べたように、それによって各クラブ、リーグが被る経済的ダメージは計り知れません。その放映権による収入を失うことで、クラブが経営破綻の危機にひんするようなレベルであることを再確認しました。ファイナンシャル上の「健康のリスク」を冒してまで是が非でもシーズン再開に突き進まなければならない理由の1つであったわけなのですが、一方で彼らに見えないプレッシャーをかけた「放送がなされないと困る人々」も中には多額の資金を投じている輩がいただけに別の意味で必死ではあったことに間違いはありません。

UEFAが公表しているリポートから2019-2020シーズンにおけるヨーロッパ5大リーグのテレビ放映権収入を見てみると、プレミアリーグは、2019-2020シーズンは国内外合わせて36億200万ユーロ(約4180億円)ものテレビ放映権収入を得たとあり、2020-2021以降は年間36億3500万ユーロ=約4219億円になるようです。2番目のテレビ放映権料を誇るスペインのラ・リーガは、モビスター・ラ・リーガとGOLがライブ放送している国内分を今季から3年総額34億5500万ユーロ(約4010億円)で契約しています。国外分については、今季から5年総額44億8500万ユーロ(約5205億円)という大型契約を結んでおり、2019-2020シーズンの年間総額としては、国内外合わせて20億4900万ユーロ(約2378億円)のテレビ放映権収入を計上していることになります。

このように、世界のトップリーグを見てみると数千億円という単位になりますが、Jリーグも先日契約を2年更新し、2028年までの12年契約で総額2239億円という状況です。と言っても、1クラブあたりの分配金(均等分配金)はJ1で3億5000万円、J2で1億5000万円、J3で3000万円というレベルであり(その分賞金などに振り分けている)、J1ヴィッセル神戸の売り上げが100億円を超えたというのに、その放映権分配による収入はわずか3、4%ほどでしかないのが現状です。

比較対象の違いという部分はあるにしても、こういった部分を改善していく必要があるわけで、放映権で10、15%という収入があればまた使い道も大きく変化します。このように考えると、なんとしてもアジアのビッグマネーを呼び起こすような動きが必要不可欠であり、リーグ自体がより大きな戦略を描いて実行に移すことが求められる気がします。まだまだこの部分は改善することができると考えられるので、今後の発展を期待しましょう。【酒井浩之】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「フットボール金融論」)

◆酒井浩之(さかい・ひろゆき)1979年8月24日、愛知県生まれ。幼少時よりサッカーに打ち込み、大学卒業後は広告代理店やスポーツメーカーに勤務。2015年3月にレアル・マドリード大学院スポーツマネジメントMBAコースに日本人として初めて合格。卒業後、レアル・マドリードへ同コースから唯一選出され入社。17年6月退社。現在はスペインと日本を行き来しながらスポーツビジネスのコンサルティングなどを手掛けている。

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