新連載「フットボールの真実」が今日3日からスタートします。毎週火曜日から土曜日まで、日本サッカーの話題を硬軟織り交ぜてお届けします。今週は「当落線上の男たち」と題し、23人のW杯ロシア大会メンバー入りを巡る選手たちの胸の奥に迫ります。W杯2大会で得点したFW岡崎慎司(31=レスター)は、昨年9月を最後に代表から遠ざかっている。この4年間、揺れる思いがあった。


 岡崎は3月のベルギー遠征も招集されなかった。ハリルホジッチ監督は「彼がレスターでやっている役割は、代表とは全く違う」と言い放った。ポストプレーを大きな役割とする指揮官が描く1トップ像は、裏を取る駆け引きや泥臭くゴールに向かう岡崎のスタイルと差がある。それでも自身3度目のW杯を諦めてはいない。「監督の概念を覆さなきゃいけない。『代表ではレスターと違う役割を与えている』とずっと言われてきている」。戦術を超えた強烈なメッセージを残すプレーを意識している。

 4年前のブラジルで味わった悔しさが薄れることはない。大会前シーズンはマインツでブンデス日本人最多の15得点を決め「自分のピークだと思って臨んだW杯だった」。だが、結果は1得点したものの1分け2敗で1次リーグ敗退。「何もできなかった、と責任も感じるほど重たい負けだった」。その後のアジア杯も優勝を逃したことで、自分のレベルアップのために突っ走ってきた気持ちに変化が生まれた。

 「今までは全て自分に対してテーマ設定をしてきた。W杯以降は、自分のことも磨きながら、チームのためにとか、若い選手がどうやったら出てくるかとか、周りのことを考えて行動しようと思った」


 W杯、アジア杯で失意を味わった中で「選手なので何かを目標にしていかないと」と出した1つの答えだった。なじみがなかったSNSやブログを始め、動画を投稿したりプレーの反省などをつづった。「誰かが見てくれれば、何か伝わることがあるかなと思った。ありのままの自分を伝えたかった」。自分の経験が少しでも広く伝わればと心を砕いた。

 その後、転機があった。15-16年シーズン、レスターで誰も予想していなかったプレミアリーグ初優勝。クラブ創設133年目で「奇跡」とさえ呼ばれた。しかし、2トップの一角として主力だった岡崎は100%で喜べなかった。エースのFWバーディーの大活躍を見たからだった。「5試合連続(得点)、7試合連続、10試合連続って点を決めていくのを見て。最初は『こういうことあるよな』と思いながら見ていた。でも10点、11点と連続で取った時に『自分もそうなりたい』と。久しぶりに選手として火が付いた」。優勝シーズンに個人として自分は何も残していないと、ひりつくような思いになった。

 今はSNSの更新も、ブログでの記事投稿も減った。世界で通用するとは、どういうことか。相棒の姿を目の当たりにして、考えが変わった。「他人のことを考えていることが、怖くなった。おごったつもりはなかったけど、自分は底辺で、バーディーやもっと上のやつらはいる。そいつらの中で生き残ることだけ考えるようになった」。自分はまだ成長できる、成長しなければならない。その一心で、今はボールを追いかけている。

 初心に帰り、あらためて気付いたことがある。海外でプレーしたいと思ったのも、日本代表で世界の壁を感じたことがきっかけだった。「代表に入るか、入らないかも刺激になる。入ればいい刺激になるし、入れなかったら悔しい」。日本サッカーの力になりたい。その思いが、岡崎から消えることはない。【岡崎悠利】



14年W杯のコロンビア戦でゴールを決める岡崎慎司(右)
14年W杯のコロンビア戦でゴールを決める岡崎慎司(右)