日本代表のゴールマウスを守ってきたGK楢崎正剛(42=名古屋グランパス)は、コインの表と裏、ポジとネガの関係で日本人の決定力を捉えていた。「GKがヘタなのかもしれない」。決定力というと、FWばかりに目がいきがちになる。だが、シュートを受ける守護神ならではの視点で「GKのレベルが高ければ(FWはGKの技術を)上回らなければいけない」と説明した。

 日本の「決定力不足」と同じくらい日本の「GK難」も長年ささやかれている。2つの問題は全く別のようで、実は同じなのではないかというのが楢崎の考えだ。GKのレベルが高ければ、シュートはなかなか入らない。ゴールをこじ開けるためより正確で強いシュートを求めることで、お互いが切磋琢磨(せっさたくま)していける。

 J1最多631試合、日本代表として国際Aマッチ77試合を経験し、外国人ストライカーと日本人の違いは「GKのことを知っているかどうか」と感じたことがある。「外国人はGKが嫌と思うところを知っている。でも日本人は自分の打ちたいところにシュートを打っている選手が多い」。GK側の心理や状況まで理解してシュートを放っているかどうかの差異だ。

 楢崎が今までで一番「嫌だ」と感じたFWは名古屋で同僚だったウェズレイ。「『このFWはすごい』というのは対戦している時よりも普段の練習の方が分かる。ウェズレイは強くて速くて正確でGKの嫌な位置に打ってくる。少し横に打たれたらもう追いつけない」。ブラジル出身の助っ人は広島、大分でも活躍し、J1歴代7位タイの通算124点を挙げた。通算100得点以上は13人いるが、ウェズレイの1試合平均0・571得点は歴代1位だ。歴代最多181得点のFW大久保でも0・444点。ウェズレイのゴール前での良質なプレーをうかがい知れる数字である。

 「やっぱり点を取る人は質が高い。強くて正確」。世界に通用するFWを育てるためにGKを育て、GKを育てるためにFWを育てる-。決定力不足と聞いて一見無縁と思われそうなところに、実はヒントが隠されているのかもしない。【小杉舞】