J1も残り3節となった。今季J1に昇格した大宮は現在年間勝ち点50の6位。シーズン前に目標に設定した勝ち点48を上回り、順位も過去最高位が見えてきた。

 ピッチで勝利のために走り回る選手がいる中で、もう1人。自分自身との戦いに挑み続けている人がいる。

 塚本泰史アンバサダー(31)が9月に大宮の本拠地NACK5スタジアムから佐賀県小城市まで約1200キロを8日間かけて走破するチャレンジに成功した。

 現役だった10年1月に右膝に骨肉腫が見つかり、病気と闘いながらも「もう1度ピッチに立つ」ことを目標に毎年チャレンジを続けてきた。12年に東京マラソン完走、13年は富士登山、14年は大宮から仙台まで自転車で走破し、昨年はトライアスロンに挑戦した。

 「やるからにはインパクトを与えられるようなきついチャレンジじゃないと意味がない」と同じ病気と闘う人々にパワーを与えるために挑んだ。今年は企画書から行程表まで自分で考えた。毎日朝6時に出発し、宿泊地には夜7時に着くように計算。20、30キロ刻みにコンビニ等で休憩を挟んだ。坂道でペースが落ちたりし、休めるのはほんの5分から10分ほど。地図上であらかじめ設定していたコンビニがなくなっていたりするハプニングもあった。行程通りにいかず「本当にたどり着けるのかな」と不安になったこともあるが、「1日を終えて振り返っても何も覚えていない」というくらい、がむしゃらに自転車をこぎ続けた。

 道中ではがんを克服してプレーするフットサル神戸の鈴村拓也(37)や、がんで闘病しているフットサル湘南の久光重貴(35)らとエールを交換し合った。6月に新潟DF早川が急性白血病を公表した際、塚本さんは真っ先に動きだした。「自分に何か出来ることはないか」。今回の挑戦でも早川と連絡を取り合い、励まし合った。

 ゴール地点に設定したのは、佐賀県小城市。塚本さんと同じ骨肉腫に罹り、中学生の時に亡くなった梅崎太助(だいすけ)くんの出身地。両親とは今も交流が続いており、梅崎くんをきっかけにして作られた「三・九(サンキュー)カップ」という小中学生のサッカー大会に合わせた。たくさんの子どもたちが待ち構え、現役時代の背番号「2」と書かれた紙を掲げ温かく出迎えられると、涙が止まらなかった。

 多くの人が道中で声援を送ってくれ、人の温かさに気付かされた。今回の挑戦を終えて「6年間振り返ると、もう1回ピッチに立つために本気で努力してきたのかな。もっとやることいっぱいあったんじゃないか」と振り返った。まだまだ諦めない「ピッチに立つ」という目標を再確認するための大きなきっかけになったに違いない。【青木沙耶香】


 ◆青木沙耶香(あおき・さやか)1992年(平4)8月29日、東京都生まれ。上智大を経て15年東京本社に入社。5月からスポーツ部サッカー担当に配属。今季はJ1横浜と大宮を担当。ゴルフに挑戦するも、なかなかスコアが伸びず、悪戦苦闘中。