INAC神戸MF澤穂希(36)が代表復帰弾を決めた。なでしこジャパン佐々木則夫監督(56)が視察したAS埼玉戦の後半9分、芸術的な右足ジャンピングボレーでゴールネットを揺らし、勝利に貢献。今季開幕戦で記録した最年長ゴールを36歳7カ月20日に更新するだけでなく、なでしこリーグ歴代2位タイの150得点も達成した。来月1日の女子W杯カナダ大会(6月開幕)代表発表前最後の一戦で3得点に絡む存在感。招集されない理由は1つもない。

 W杯は澤だ。1-0の後半9分、澤は「みっちょ~ん」(MF川澄の愛称)と叫びながらゴール前に約25メートル駆け上がった。川澄がフワリと蹴った右後方からのクロスを、漫画かゲームのように、右足を空中で振り抜いた。目の前にいたFW大野が「すげえ~」とピッチ上で絶叫するほどのスーパーゴール。澤だけは「私はシュートを打つときに基本は何も考えない。無意識で蹴っただけ。感覚ですね」と冷静に分析した。

 開幕浦和戦のリーグ最年長ゴールに続く今季2点目は、元日本代表FW大谷未央(TASAKI)に並ぶ歴代2位タイの150得点の記念弾でもあった。読売ベレーザ(現日テレ)の12歳FWとして、91年7月7日にリーグデビューしたフジタ天台戦でアシストした記録は残っているが「初得点は記憶にないです…」。同28日の新光精工戦の初得点から24年、戦い続けてきた証し。「記念すべきゴールが、みんなも自分自身も印象深い1得点になったのはうれしい。次は160点を目指します。貪欲に1点でも多く取りたい。200点までは一気には無理ですからね」。大野の165点にも迫る36歳。まだまだ走り続ける決意表明だ。

 後半6分の先制点も、澤の強烈ミドルを相手GKがはじき、こぼれ球を川澄が右足で押し込んだもの。2-1の同33分には澤のスルーパスをFW高瀬が決めた。3得点すべてに絡むだけでなく、守備でも危険を察知し続けた。来月1日のW杯代表発表前最後の試合を、誰もが称賛する内容で締めくくった。

 これで御前試合では2戦2発。昨年5月の女子アジア杯以降、澤を招集していない佐々木監督も「勝負に関わる仕事をしている。ここだというツボをよく知っている」。初優勝した11年ドイツ大会MVP&得点王の姿を大絶賛した。

 代表復帰へ、澤は「自分にできることをやるだけ」と話したが、最後には「ぜひかなえたいですね」と本音も漏らした。決定すれば男女通じて初のW杯6大会連続出場となる。「未来ある子どもたちの目標になれればいい」。なでしこの背番号10は、澤しか似合わない。【鎌田直秀】

 ◆澤の代表招集 12年ロンドン五輪銀メダル後、初の大会となった13年3月アルガルベ杯(ポルトガル)は未招集。同6月の親善試合ニュージーランド戦で315日ぶりに復帰も左足付け根を痛め、試合後に離脱。同7月の東アジア杯は負傷で見送られたが、9月の親善試合ナイジェリア戦で復帰。14年3月のアルガルベ杯準優勝、5月のアジア杯優勝に貢献。以降の同10月カナダ遠征、今年3月のアルガルベ杯は若手起用や、右膝痛を考慮され代表から外れている。