全日本実業団対抗駅伝(ニューイヤー駅伝)は来月1日、前橋市の群馬県庁前を発着点とする7区間(100キロ)で行われる。4連覇を狙う旭化成と優勝候補の双璧をなすのが、来年の東京五輪男子マラソン日本代表内定の服部勇馬(26)を擁するトヨタ自動車だ。

9月のMGCにはチーム別最多の4人が出場し、服部が日本記録保持者の大迫傑(28=ナイキ)に競り勝って2位に入った。富士通が予選で敗退したため、今大会でただ1人東京五輪代表に内定している選手となる。

服部は12月に入ってからの取材で、現在の状態を次のように説明した。「ニューイヤー駅伝に向けてエース区間(4区)や、主要区間で実力を発揮できるところまで上がって来ました。中部予選(11.8キロの7区で区間賞)以降走りのリズムが良くなり、そのリズムで長い距離も走れる感触をつかんでいます。マラソンで自分よりも上の記録を持つ(設楽)悠太さんや井上(大仁)さんに勝ちたい。駅伝で必要なスピードや駆け引きが、マラソンにもつながります」。

服部のマラソン自己ベストは18年の福岡国際で記録した2時間7分27秒で日本歴代8位。設楽悠太(27=ホンダ)は2時間6分11秒の日本歴代2位、井上大仁(26=MHPS)は2時間6分54秒の同5位の記録を持つ。

井上は前回大会の4区で区間賞を獲得、設楽は過去に3回4区の区間賞を取ってきた。その2人に勝てば4区区間賞が有力になり、チームは優勝に大きく前進できる。

トヨタ自動車は3度のニューイヤー駅伝優勝があるが、過去3年間は2位、3位、3位とあと1歩で優勝を逃してきた。入社4年目の服部はまだ優勝を経験していない。「優勝への思いは年々強くなっています。オリンピックイヤーは世界と、どれだけ勝負できるかを試す大事な年。その最初にふさわしい走りをしたい」と心に期するものがある。

服部に注目が集まるトヨタ自動車だが選手層の厚さでも旭化成に対抗できる。

藤本拓(30)はMGC9位で、12月の福岡国際マラソンでも日本人トップの2位でゴールした。学生時代にはインカレで大迫に勝ったこともあるスピードランナーで、ニューイヤー駅伝ではこれまで1区に4度、4区に1度起用されている。

主将の大石港与(31)は5区と3区で区間賞をとったことがあり、17年大会では3区で20人抜きと驚愕(きょうがく)の走りを見せた。その大石を上回るスピードを今季、トラックで見せたのが田中秀幸(29)だ。5000メートルで日本選手権2位となり、ヨーロッパ遠征では13分22秒72で走った。この記録は世界陸上ドーハの参加標準記録に0.22秒まで迫るもので、今季日本ランキング1位だ。

さらに入社3年目の西山雄介(25)が戦力として計算できるようになった。3月の世界クロスカントリーで日本代表を経験し、7月には5000メートルで自己新(13分49秒03)、11月の中部実業団対抗駅伝はエース区間の3区で区間新と快走を続けた。

この4人が1区と3区候補で、旭化成に食い下がる。田中は向かい風にも抜群の強さを見せる選手で、上州の風を正面から受ける5~7区でも力を発揮する。西山も向かい風に自信を見せているので、後半区間起用があるかもしれない。

トヨタ自動車が連覇した15年16年大会は、5区でトップに立ち、6区の田中が2年連続区間賞で勝負を決定づけた。ここ3年は6区の区間賞を、旭化成の市田宏(26)が獲得している。6区はチームの6~7番手の選手が起用されることが多く、選手層の厚さが表れる区間なのだ。

トヨタ自動車の佐藤敏信監督(57)は「まずは自分たちがベストメンバーを組むことが優先される」とした上で、「前半からしっかり旭化成に食い下がれば、どこかの区間で前に出るチャンスはある」と手応えを感じている。

「ニューイヤー駅伝で優勝して、服部のオリンピックに勢いをつけるスタートを切りたい」。服部とトヨタ自動車の快走で五輪イヤーの幕を開ける。