伊藤華英のハナことば

「オンライン時代」に必要なもの/伊藤華英

10月25日、「東北『夢』応援プログラム」が再開された。コロナの影響で遅れてしまったが、今年度が始められたことはとてもうれしい。

来年は2011年3月11日の東日本大震災から10年という時期を迎える。このプログラムは、震災後に設立された公益財団法人東日本大震災復興支援財団のコンテンツの1つ。私は4年前から参加している。


東北「夢」応援プログラムに参加した生徒たち
東北「夢」応援プログラムに参加した生徒たち

震災当時、私は競泳人生真っただ中だった。ロンドン五輪の前年。大きな衝撃を受けたし、現在の自分の思考にも影響を与えている。たとえば「なぜ泳ぐのか」とか「スポーツの社会における役割」などを、深く考えるようになったこと。「スポーツの概念とは」ということを考えるベースにもなった。自分の今の人生にも大いに影響しているということだ。

この東日本大震災に対して、自分の中の「何かしたい」という気持ちを、このプログラムが後押ししてくれている。私が参加した初年度、街全体が今までのようには復興されていなかった。震災以前の写真と比較して、「こんな美しい景色だったんだ」と思ったこともある。

しかし現在は、多くの方の努力が実を結び、美しい景色が戻りつつある。このプログラムを継続していくたびに素晴らしいコンテンツだと感じている。


オンライン指導の様子
オンライン指導の様子

「スマートコーチ」というツールを使い、遠隔指導で1年間、10人ほどの子供たちを指導する。最初は「水泳の指導は水の中へ一緒に入らないと!」と疑いもなく思っていたが、実際に遠隔指導を行ってみると、多くのものを得ることが出来た。子供たちは毎月、私のアドバイスをしっかりと聞いて、一生懸命頑張って泳いでくれる。そして1年後には見違えるほど上達する。この遠隔指導の未来を感じた。

子供たちが成長していく姿を見るのも面白い。「水泳はレースに生きざまが現れる」と言われるように、動画1本を見るだけでいろいろなことが分かる。この期間、どんな生活をしていたのかな? 前回は入水を気を付けていたのに今回は忘れちゃったかな? 感じることはたくさんある。最初に教えていた子供たちは、もう高校生になる。受験なども経験して大人になり始めている大事な時期だろう。


現在、多くの教育現場を始め、オンラインでの行動が日常化してきている。コロナ禍で、その点に関しては一気に時代が進んだ感がある。オンライン講義や、講演なども機会が増えてきている。

実際、講義をしている側は、視聴している方の顔や表情を正確にとらえることができない。なので、「生徒」は「先生」に自分自身で聞きたいことを自らぶつけていくことが必要になるということだ。

今後は欲しい情報、受けたい授業、コミュニティーを、より自分で選んでいく時代になるのだと思う。自分自身の未来予想図を描いていくとき、これからは与えられるものをもらうのではなく、自分から選択し手に入れていくのかなとも感じた。

私は授業が大好きだったし、人と会って話すのも、集まるのも大好きだ。だから少しでも以前のように戻ればいいと望んでいるが、時代の流れはそうならないかも、とも思う。オンラインが進んでいけばいくほど、人とのつながりや思いやりを意識していく必要が今後はあるのかもしれない。

(伊藤華英=北京、ロンドン五輪競泳代表)

競泳界で「美女スイマー」として活躍し、北京、ロンドン五輪に出場した伊藤華英さんが、水泳に限らずさまざまなスポーツの魅力をアスリート目線でお伝えします。
 ◆伊藤華英(いとう・はなえ)1985年1月18日、埼玉県生まれ。01年世界選手権で初の日本代表入り。08年北京五輪で背泳ぎ2種目出場、12年ロンドン五輪で自由形リレー2種目出場。12年秋に現役引退。順大大学院博士後期課程修了。日大非常勤講師。173センチ。

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