違法賭博問題による無期限の試合出場停止処分から5月に復帰した男子シングルスの桃田賢斗(23=NTT東日本)が苦しみながらも初戦を突破した。

 1回戦でインカレベスト8の猪熊心太朗(21=日大)と対戦。決勝進出なら2年ぶりの日本代表復帰が決まる大事な大会で重圧は隠せない。開始から精彩を欠いたプレーで第1ゲームを先取された。それでも第2、3ゲームでは本来のプレーを取り戻し、2-1で2回戦に進出した。

 「国内ナンバーワンを決める最高峰。独特の雰囲気があり、思うようなプレーができなかった」。第1ゲームは15-21と先取を許した。場内がざわめく中、第2ゲームも4-8とリードされる。ここでやっと気持ちが切り替わる。「相手が勢いに乗りそうだった。自分が行かないと負ける。完全に開き直れた」。

 本来の動きを取り戻すと、そこから5連続得点で逆転。スマッシュ、ネット間際にシャトルを落とす、得意の「ヘアピン」も決まり、21-14とゲームを取り返す。第3ゲームも21-13と圧倒。大事な初戦をものにした。「第3ゲームではスマッシュも良いところに決められた。今後の手応えもつかめた」と、最後はしっかり収穫も得た。

 天才ともいわれた元世界ランク2位は、5月に復帰後は国内外で10大会に出場し、わずか1敗のみ、現在は国際大会5連勝中と好調を維持し、世界ランキングは復帰当初の282位から50位まで浮上している。2年ぶりの国内最高峰の全日本総合。決勝までたどりつけば2年ぶりの代表復帰が決まる。「周りの支えてくれた皆さんへの恩返しのためにも優勝を狙う」。劣勢から完全復活への1歩を刻んだ。