「絶対王者」の背景には、“名将”のコーチング論がある。ラグビーの大学選手権決勝(7日、秩父宮ラグビー場)に向けて、9連覇を狙う「絶対王者」の帝京大(関東対抗戦1位)が4日、都内で練習を再開した。

 2日の準決勝は東海大に快勝。この日は、選手の疲労回復を考慮し、軽めのトレーニングで調整した。練習途中、岩出雅之監督(59)が部員約140人に15分、話し込む場面があった。「勝負ごとは心技体が一致しないといけない。最後は全員が(決勝の明大戦へ)充実度を感じるためにどうすれば良いか。決勝という特別な感情を持つのではなく、1人1人が考え方をしっかりと整理しよう」。戦術ではなく、大舞台に向けての部活動の意義などを伝えた。

 明大との決勝に向けた準備は「これから」とし、組織統一を最優先とする。最も重要なことは「今の自分に満足せずに、常に自分を変えていくこと。イノベーション(変革)が大事。(9連覇の)プレッシャーはゼロではないが、連覇するために指導はしてない。試合当日に選手の『最高』を引き出して、その結果が勝利や連覇につながれば良い。僕の役割は、魅力ある人材づくりでもある」。

 さらにこう続けた。「学生は4年間で終わる。その後の人生の方がはるかに長い。社会人になってから求められる人になってもらいたいし、ラグビーを通じて組織の中で生きていける力を身に付けてほしい」。前人未到の記録まであと1勝。選手へさらなる成長を促し、チームを1つにしていた時間だった。