【メルボルン(オーストラリア)=吉松忠弘】世界9位の錦織圭(29=日清食品)が、3時間48分の激闘を切り抜けた。「世界のサービスエース王」で同73位のイボ・カロビッチ(クロアチア)に4大大会自身最多の59本のエースを浴びながら、6-3、7-6、5-7、5-7、7-6のフルセットで振り切った。最終セットは、今大会で初めて採用された10ポイント先取のタイブレークだった。3回戦では同44位のJ・ソウザ(ポルトガル)と対戦する。

   ◇   ◇   ◇

張り詰めた緊張感で、観客の息づかいが止まった。合計328ポイント目。錦織がサーブをセンターに放つ。カロビッチがバックでリターンした球は、鈍い音を立て、彼自身の目の前に落下した。

「負ける目前まで追い込まれた。勝てたのが不思議なぐらい」

勝利の瞬間、錦織は両膝を折り、両手をコートにつき、かがみ込んだ。そのまま、数秒ほど動けず。その姿が死闘と喜びを物語っていた。「挽回して、気持ちも切らさず、最後までプレーできた。勝ちきった試合だった」。何度も両手を突き上げた。

マッチポイントこそなかったが、それに匹敵する大ピンチが2度あった。最初は、最終セット4オールで錦織のサーブ。0-40と、3本連続でのブレークポイントを握られた。落とせば、次は「エース王」のサーブだ。破り返すのは困難で敗色は濃厚になる。「もう負けたなと思った」。それでも「第1サーブが入れば多少は可能性がある」とサーブにかけた。第1サーブを3本連続で入れ、5点連続で奪った。最大のピンチを逃れた。

最終セットは、今大会から採用された10点先取のタイブレーク。そこでも6-7で相手のサーブが2本というピンチだった。しかし、そこは「チャンスはあると思っていた。読みさえ当たれば、確実にチャンスは来ると思っていた」。2本連続でリターンを返球。4点連続奪取で勝利へとつなげた。

自身の4大大会で最多となる59本のサービスエースを奪われた。1ゲーム平均で必ず1本を奪われた計算だが、第2サーブにも手を焼いた。「セカンドでも、俺の(第1)サーブより速かった。200キロも出てた」。相手の最速は219キロ。錦織の第2サーブの平均速度は146キロだったので、時速73キロの差も生まれた。ただテニスはエースの数や速度を競うスポーツではない。どちらが勝ってもおかしくなかった一戦をものにし「すごいうれしかった。自信が増してきた」。

4大大会で5セットを2戦続けて戦ったのは、過去に1度だけ。準優勝した14年全米の4回戦、準々決勝以来でともに勝っている。大舞台での経験豊富な錦織が、勝負どころを見逃さず底力を見せた。