今回の全仏では、世界7位の錦織圭(29=日清食品)の勝ち進み方に焦点が当てられた。3回戦で4時間26分、4回戦で2日がかりの3時間55分。ともにフルセットを戦ったことで、体力が底をつき準々決勝で力尽きた。

焦点だったのは、3、4回戦をストレートで勝てたのではないかとする推測だ。3回戦は第1セットを先取し第2セットも4-2。続く自分のサーブを40-0から落とした。また4回戦は、第1セットを先取して第2セットの2オール。相手のサーブで0-30で、がら空きのコートに打てば決まったフォアをネットした。

勝負に「たられば」はないが、この2つの場面で、点を奪っていれば、ストレート勝ちできた可能性は広がったはずだ。その推測は成り立つ。そして、ストレート勝ちをすれば、体力温存でナダル戦に挑めたという仮定の話になる。もちろん、だからといってナダル戦の勝敗は分からない。

その2つの場面は、戦略ミスというより「油断」のような気がする。錦織も「雑なプレーをしてしまった」と認めている。錦織のすべての試合のスコアを分析したわけではない。しかし、ジュニア時代、40-0から自分のサービスゲームをよく落としたと記憶している。

日本男子としても小柄だった錦織は、体力温存のために、試合中、ひと息つく瞬間が必要だったのではないか。それが、自然と身についてしまったのだと思う。ちょっとした「油断」や「ひと息」が、長引かせる必要のない試合をフルセットに導いたということだ。

しかし、5セット試合が、錦織の4大大会上位進出を妨げているかというと、そう単純ではない。4大大会で5セットを戦った試合は計25試合。そのうち、負けた4試合を除外し、勝ち上がったフルセット21試合の次戦の勝敗を調べてみた。

10勝11敗である。ほぼ五分だ。そのうち、ナダルやジョコビッチといった上位選手との対戦もある。普通にやっても勝ちにくい相手で、あながちフルセットにもつれたことだけが、上位進出を阻んだとは言い切れない。