空飛ぶナースだ。大会に出場すると所属先の名前が目立つ。「町立下川病院」。ノルディックスキー・ジャンプの安沢翔一(22)が准看護師として働く病院だ。

昼は医療に従事し、夜はジャンプの練習に打ち込む。「将来の夢は両立して五輪に出たい。なかなかいないと思うので」と、ジャンプ界に新たな風を吹かせようと、もがいている。

名寄西小6年からジャンプを始めた。両親が経験者だったことがきっかけだった。中学、高校でも競技を続け、進路に迷った。当初は大学進学を考えたが「資格を取りながらジャンプを続けることを決めた」。地元名寄市内にあった准看護師の専門学校に入学した。大変だった実習なども乗り越え、卒業後から現在の病院で平日週5日、勤務する。「仕事も中途半端にはできない。全力で仕事した後にジャンプの練習」と忙しい日々を送るが、充実感を漂わせる。

新型コロナウイルス感染拡大の影響を受ける。出場予定だった1月10、11日の札幌での大会は欠場した。「コロナで病院も大変な中、医療従事者の僕が札幌まで行くのは難しい」。大会へ向けて練習をしていた矢先、年明けの感染状況を考慮して決断。現状では2月以降の大会出場も見合わせる可能性があり「最悪今季は試合に出られないかもしれない」と不安を募らせる。

それでも前を向く。「ひたすら次に出られる試合に向けて練習するだけ」。下川町はジャンプが盛んで「病院職員や患者さんから『頑張って』と応援してもらっている。期待に応えたい」。その思いが安沢の士気を高めている。【保坂果那】

◆安沢翔一(あんざわ・しょういち)1998年(平10)9月17日、名寄市出身。名寄西小6年から下川ジャンプ少年団で競技を始める。名寄中、下川商高をへて、上川北部医師会付属准看護学院に入学し、19年卒業。今季は12月の名寄ピヤシリ杯で26位、吉田杯36位。167センチ、55キロ。家族は両親と弟、妹。