パラバドミントンで激しい代表争いが始まった。20年東京パラリンピックの新競技で、今月4日に実施種目数も「14」に決まったばかり。その中でも女子シングルスSU5(上肢障害)には世界ランキング1位鈴木亜弥子(30=七十七銀行)、3位豊田まみ子(25=ヨネックス)、6位杉野明子(26=ヤフー)が並び立つ。種目ごとの出場選手数が絞り込まれることも予想され、世界トップレベルのサバイバルを制した選手が、金メダル最有力候補になるのは間違いない。

■世界ランク1位、3位、6位

 鈴木は最高のスタートを切った。20年東京の種目数が決まった直後、7~10日に東京・町田市で開催されたジャパン・パラ国際で、それまで連敗していた楊秋霞(中国)を倒し優勝。国内初の国際バドミントン連盟(BWF)公認大会には世界29カ国から強豪が参戦しただけに価値があった。

 「代表争いはとても楽しみです。私には経験があるので、それを生かしたい。東京でも私が金メダルを取ります」と鈴木。09年に世界、10年にはアジア女王になって引退。東京を目指して昨年復帰し、今年6月には世界1位の座に就いた。東京出場の基本はランキング。試合方式、地元枠等は未定だが、種目が14と多いために選手数が少数に絞られるという見方もある。1種目に複数の日本選手が出場できるかも分からない。

 鈴木を追うのがパラバド界のアイドル豊田だ。そのルックスからメディアへの登場機会も多いが、世界3位の実力者でもある。ジャパン国際では1次リーグで敗退し、悔し涙を浮かべた。昨年8月に左膝半月板を手術して万全の状態ではないが、鈴木が復帰するまでは国内NO・1だっただけに巻き返しへの思いも強い。「1種目6~7人かも。国内でも海外でも、出場する大会は全部勝つつもりでやっていかなければ」。3年後へBWF公認の国際大会、2年に1度の世界選手権(今年は11月、韓国)でポイントを積み上げていかなければならない。

 世界6位の杉野は言う。「もちろんシングルスで、という気持ちはありますが、代表チームの事情もあるし自分の希望だけを通すわけにもいきません」。15年世界選手権で右アキレス腱(けん)を断裂したが1年の治療、リハビリから復活。8月のペルー国際では豊田を破って優勝するなどランクを上げてきた。ジャパン国際ではシングルス8強もダブルス2種目で銅メダルを獲得。2人を意識しつつ、ダブルス代表も視野に入れる。

 日本の女子SU5、鈴木、豊田、杉野は世界トップレベルにある。中国を筆頭にアジアにも強豪がひしめくが、海外ライバルたちともしのぎを削りながら代表争いは続いていく。3人のうち東京のコートに立った選手が、金メダル最有力候補としてプレーすることになる。【小堀泰男】

 ◆パラバドミントン 障害の種類や程度によってクラスが分かれ、アルファベット(種類)と数字(程度)で表記される。コート、ラケット、シャトルは通常と同じ。車いすのWH1、2、立位のSL3のシングルスはプレーエリアがコートの半面になる。また、WH1、2ではダブルスを含めてネットとショートサービスラインの間に落ちたシャトルはアウト。SL3のダブルスとSL4、SU5、SS6は通常のルールで行われる。

 

<専用強化拠点が完成>

 東京大会のメダル量産へ専用の強化拠点「ヒューリック西葛西体育館」が、9月に完成した。日本障がい者バドミントン連盟(JPBF)のオフィシャルゴールドパートナー、ヒューリック株式会社の全面サポートを受けて、東京都江戸川区にある銀行の研修施設の体育館を約2カ月かけて改修。体育館入り口をバリアフリー化し、8面のコートを確保した。JPBFの平野一美理事長は「これまで合宿のときは3カ月前から福岡や千葉などの会場を電話で予約していた。パラバドミントン専用の会場はNTC(ナショナルトレーニングセンター)しかなかったのでありがたい。強化指定選手の練習会や合宿に活用したい。海外の選手も呼んで強豪と練習させたい」と話した。