女子シングルス決勝で、世界1位の上地結衣(23=エイベックス)が6-1、6-1で田中愛美(21)を破り、大会10連覇を飾った。第1セットの第1ゲームで田中のサービスをラブゲームでブレーク。直後にブレークバックされたが、その後は一気にギアを上げ、ストレートで完勝した。

 今季後半に調子を上げて世界ランキング1位に返り咲いた。その要因はギアの変更にある。7月に6年ぶりに車いすを新調。座面を高くして車輪も一回り大きいものに替えた。そして、あえてウィンブルドンの芝で初めて使った。試行錯誤、チャレンジの年と覚悟しながら、早くも成果を実感しているという。

 「高い打点からの速いショットやドロップショットに素早く反応できるようになりました」。新車に乗ることで筋力の使い方にも変化が生まれ、これまで届かなかった球にも対応できるようになったという。

 リオ・パラリンピック以降、メンタルトレーナーの指導も受けるようになった。劣勢の場面で自らの状況を冷静に判断でき、次の試合を見つめる目を持てるようになり、より前向きに試合に臨めるようになった。「今がダメでも次の試合に生かせるようなプレーを心掛けたら、その試合を逆転できたこともありました」。

 全日本選抜マスターズは上地にとって競技者としての出発点になった大会でもある。12歳の時に観戦に訪れた際、国枝慎吾とダブルスのエキシビションマッチを体験。11年前に初出場し、翌年の優勝以来10年間王座を守り続けている。「とても思い出深い大会。10連覇は素直にうれしいです」。勝利インタビューの言葉に喜びがにじんだ。【宮崎恵理】