東京パラリンピックのアーチェリー代表に内定している上山友裕(33=三菱電機)と重定知佳(38=林テレンプ)が12日、オンラインでイベントを開いた。

題して「ウエシゲ劇場!!」。リカーブの世界ランキングで男子3位の上山と同女子5位の重定は、それぞれ個人戦の金メダル候補であると同時に、男女2人で戦うミックス戦でも頂点を狙っている。

2人は自己紹介に続いてペア結成のなれそめを映像やイラストを使って紹介した。16年のリオ・パラリンピックで個人戦7位に入賞した上山の戦いをテレビ観戦し、大ファンになったという重定は、11年間プレーした車いすテニスを引退後、15年からアーチェリーを開始。リオ大会後に岩手県であった全国大会の会場の仮設トイレの前で偶然上山を見かけ、ウン命的な出会いを果たした。

「お願いですから私のフォームを見てもらえますかー」。その大会限りでアーチェリーをやめようと決めていた重定の思い出づくりリクエストを快諾した上山は「フォームが別次元。この人は必ず世界で戦える。もっと続けてほしい。本気で頑張ってほしい」と、強力に重定にプレー続行を勧めた。

その後ペアを組んだ2人は17年から世界を舞台に活躍を続けている。18年のドイツの国際大会ではリオ金メダルペアを準決勝で破って銀メダル。20年のドバイの国際大会でついに金メダルを獲得するに至った。トイレで出会った2人は決してクサイ仲になることなく、堂々の金メダル候補として注目される存在になった。

イベント参加者の質問にもざっくばらんに答えた2人は、終了後にメディアのインタビューにも対応。東京パラ代表に内定しながら2月7日に60歳で亡くなった仲喜嗣さんへの思いを問われた上山は、それまでのの柔らかい表情を引き締めて言った。「僕たちは特に親しくしてもらっていた。1年延期で東京に出られない…、こんなことってありますか…。仲さんを、仲さんの思いを『ウエシゲ』が必ず東京のフィールドに連れて行きます」。