9月5日の東京パラリンピック閉会式を持って、東京オリンピック、同パラリンピック(オリパラ)の取材を終えた。4日に車いすテニスで、世界王者、国枝慎吾の金メダル原稿を書き終え、ほっとしていると、メディアセンターで、1人の女性ボランティアに声をかけられた。

元NHKアナウンサーで、通訳ボランティアをなさっていた住吉美紀さんだった。ミックスゾーンで、報道陣の通訳をされていたのだが、お互いに常にマスク顔。顔を認識できない中で、多くのボランティアの方と目の表情だけで知り合いになっていた。

彼女の声は喜びにあふれていた。「車いすテニスにはまってしまいました。今度、どこかで、見られるところはありませんか」。現在はコロナ禍で、国内での国際大会は、一般のテニスも含め、軒並み中止。海外なら全米があると話すと、「自分でも調べてみます」。

多くの報道陣や関係者が、すでに述べたり記述しているが、多くの開催反対の意見がある中で、オリパラを支えたのはボランティアの方々であることは事実だ。現場で実感した。そして、住吉さんの言葉で気づいたことがある。

今回のオリパラは、残念ながら無観客で行われた。しかし、ボランティアの彼ら、彼女らは一般の人である。例えば、テニスや車いすテニス競技にいつも従事する関係者や報道陣ではない。それは、どの競技でも同じだった。

そのボランティアの方々が担当した競技が、少しでも胸に刺さることがあれば、無観客でも一般の人々に浸透することになる。住吉さんのひと言は、そんな簡単なことに気づかせてくれた。そして、この先の競技や大会運営に、専門家だけでなく、一般のボランティアの方に参加していただいたら、もっと普及になるのではないかと感じている。【吉松忠弘】