【読書&座禅】広島・矢崎拓也7763文字 「守護神」の哲学を雄弁に/連載〈23〉

広島矢崎拓也投手(28)が、5月9日から、栗林に代わる広島守護神を務めています。21年までは1軍2軍を行ったり来たりも、読書と座禅を取り入れて、投手としても人としても進化しました。カブス鈴木誠也や先発左腕の柱・床田寛樹と同学年の遅咲き右腕が、上位争いに加わる新井広島を支えています。「ホープに聞く」では、“投げる哲学者”の変化にも動じない思考力に迫りました。

プロ野球

◆矢崎拓也(やさき・たくや)1994年(平6)12月31日生まれ、東京都出身。慶応高から慶大に進み、大学通算26勝をマーク。16年ドラフト1位で広島入団。17年4月7日ヤクルト戦でプロ初登板先発し、勝利で飾る。22年はチーム2位となる19ホールドポイントを挙げた。今季推定年俸は2800万円。176センチ、95キロ。右投げ右打ち。

何かが変わるとき「おいしいな」

――今季から抑えを任されているが、マウンドでの態度もパフォーマンスも変わらない。

矢崎変わらないようにしているわけではなく、与えられた場所でベストを尽くすことを念頭に、一番重きを置いてやっています。

変わらないようにといっても、変わるものなので。自分の立場も、体も、球も…。どれも変化する前提で動いていて、その変化に対応できるようにという感じです。

――変化に対して、抵抗感を感じる人もいる。

矢崎変化するものだと思っているので、変化したときに「まあ、そうだよね」って思える。

あとは基本的に、受け入れる。自分に起こるすべての出来事に、まず「イエス」と言う。あとは、何かが変わるときは「おいしいな」って思うようにしています。

人はコンフォートゾーンというか、自分の心地いい空間にいるのが一番いいんですけど、それを徐々に広げていきたいなと思う。

未知のところに踏み出すことは、分からないことに対する恐怖や不安があるもの。でも、そこに踏み込んで、その景色を知ってしまえば「こんなものなんだ」ということにもなるし、どんどん広がっていくことで、自分の世界も広がっていくかなと思う。

9回、マウンドに向かう姿は見慣れた光景になりつつある=2023年6月

9回、マウンドに向かう姿は見慣れた光景になりつつある=2023年6月

――入団当初は受け入れられないような、ややぶっきらぼうな態度も見られた。

矢崎知識として受け取ることは難しくはない。知識だけ得て、分かった気になってるみたいな。理屈として理解しても、体験できていなかったんだと思います。

――切り替わったきっかけは。

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