150秒にかける青春〈13〉コロナで閉ざされた千葉明徳の夢…世界選手権でつながった希望

世界選手権(11月23~26日、高崎アリーナ)のシニア女子部門に出場する日本代表3チームのうち、東日本代表は6校から選手が集う混成チームになる。8月末のトライアウトを経て合宿を行うこと計5回。生活をともにすることで連携を深めてきた。関西で行われた強化合宿に密着。大会に懸ける思いを聞いた。(敬称略)

その他スポーツ

笑顔でピース。大学生、高校生が交じるナショナルチーム東日本代表

笑顔でピース。大学生、高校生が交じるナショナルチーム東日本代表

混成チームの苦悩

静かな空間が緊張感に包まれた。

11月2日から大阪で始まったナショナルチームの強化合宿2日目。

本番を想定した通しの演技が終わった直後だった。

メンバーが輪になる。

「思っていることがあるなら、伝えることは伝えないと。

信頼関係なんて永遠に生まれないよ!」

選手の1人が、そう訴えていた。

11月上旬に大阪で行われた強化合宿

11月上旬に大阪で行われた強化合宿

世界選手権は3週間後。

まだ演技は完成には近づいていなかった。

スタンツで次々と落下する。

動揺すると、さらにミスが出た。

コーチが輪に入る。

選手1人、1人の目を見つめながら、諭すように語り始めた。

「まだ甘いよ。

『疲れているからできない』なんて、言い訳のチアリーディングになっちゃうよ。

そんなの見たくない。

トップが飛んできたら、ミドルはやるしかないんだよ。

こっちが落ちた、こっちも落ちた…。

プレッシャーのかけ方が甘いんだと思う。

こんなに苦しい練習をしてきて、みんな、分かっているはずだよ。

絶対にできる!

そう思えるまで、やろうよ!」

コーチの話を真剣に聞くナショナルチーム東日本代表の選手たち

コーチの話を真剣に聞くナショナルチーム東日本代表の選手たち

150秒間の演技を完成させるまで、どれほどの汗を流すことだろう。

それこそが、チアリーディングの難しさであり、努力の結晶として輝く魅力でもある。

演技は一瞬。

そこにたどり着くまでに途方もない練習を重ねる。

大阪での強化合宿。何度も、何度も演技を確認する

大阪での強化合宿。何度も、何度も演技を確認する

演技の動画をチェックする選手たち

演技の動画をチェックする選手たち

コロナで欠場した大会

大学、高校。たくさんのチームから集まった東日本代表は、連携面が最も重要になる。

関西での強化合宿、初日の練習が終わる頃。ホールの片隅で大会にかける思いを聞くと、大粒の涙をこぼした選手がいた。

高校生のメンバーだった。

今年の夏、彼女は新型コロナウイルスに感染。高校最後のジャパンカップを欠場していた。

4連覇した箕面自由学園とともに、千葉明徳高校は優勝候補に挙げられていたのに…。

この物語は、そんな1人の生徒の思いから描くことにしよう。

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編集委員

益子浩一Koichi Mashiko

Ibaraki

茨城県日立市生まれ。京都産業大から2000年大阪本社に入社。
3年間の整理部(内勤)生活を経て2003年にプロ野球阪神タイガース担当。記者1年目で星野阪神の18年ぶりリーグ制覇の現場に居合わせた。
2004年からサッカーとラグビーを担当。サッカーの日本代表担当として本田圭佑、香川真司、大久保嘉人らを長く追いかけ、W杯は2010年南アフリカ大会、2014年ブラジル大会、ラグビーW杯はカーワンジャパンの2011年ニュージーランド大会を現地で取材。2017年からゴルフ担当で渋野日向子、河本結と力(りき)の姉弟はアマチュアの頃から取材した。2019年末から報道部デスク。
大久保嘉人氏の自伝「情熱を貫く」(朝日新聞出版)を編集協力、著書に「伏見工業伝説」(文芸春秋)がある。