【THE決戦・立川GP】

 走る魂が演じる「村上劇場」は、KEIRINグランプリ(30日)の大舞台で再演される。村上義弘は「今年の後半戦はたいしたことできていない」と総括するが、3月の日本選手権を制覇してのGP切符を奪取した走りは村上の真骨頂だ。近畿結束で赤板先行の三谷竜生-川村晃司の3番手。川村が最終ホームで番手まくりした。後方から仕掛けた竹内雄作、そして新田祐大をブロックで食い止めると、最後は内を突いた岩津裕介も封じる大車輪の大仕事。快勝劇でファンを酔わせた。

 「今年は年を1つじゃなく、2つとった感じがする(笑い)」と、42歳の今をジョーク交じりに口にした。村上とて生身のアスリート。直面する年齢との闘いは年々シビアになる。それでも「心身ともに落ちている部分は確かにあるが逆に上がっている部分もあると感じる」。総合力で肉体的な衰えをカバーして村上義弘であり続ける。

 それは強弁ではない。不変の激走が、いまだ村上は村上であり続けることを証明する。GP初制覇も鮮烈な記憶だ。4年前。直前の練習中に右肋骨(ろっこつ)を骨折しながら、単騎で大雨のバンクを駆け抜けて優勝する伝説を刻んだ。

 決戦2日前の初日に前後のギアを新品に交換してナイター練習で感触を最終テストした。決戦のバンクコンディションを入念に心身に焼き付けた。岩津裕介が京都勢に付けて3車。それでも「自分は番手なので関係ない」。前を任せた稲垣裕之との京都の絆で臨む。【大上悟】