川北浩貴(48=滋賀)が、3Rの1走を2着でゴールした。スリットはコンマ36とやや出遅れたが1Mまでに伸びて挽回すると、俊敏な差しハンドルを入れた。2番差しの河合佑樹には前に出られたが、舟の返りや出足は上々だった。

「展示タイム(6秒80の1番時計)も良かったし伸び型でいいですね。ペラはたたいて出足も悪くない」と相棒49号機をねぎらい、エンジン勝率28・1%とは思えない動きを見せた。

その川北は現在A2級だが、今期勝率(5月以降)は5・02。出走回数はわずか46走だ。しかしこれには訳がある。今年2月の尼崎の近畿地区選で落水し、左上腕を骨折した。これにより、8月にびわこで復帰戦を戦うまで、6カ月半ほどレースから遠ざかった。

「復帰してから(6節目)下がるエンジンばかり引いたけど、今回は下がることはなかったので一安心です。体の調子もだけど、復帰後はエンジンをどう調整していいかも分からなかったんです。ペラも失敗してばかり。でも前節(びわこG2秩父宮妃記念杯)くらいから、その辺もなんとなくつかめてきたと思います」と上昇気配を自身でも感じ取っている。けがをしたことで見えたものもある。

「僕は人とうまく接するのが苦手なタイプなんですけど、こんな僕を周りの選手が助けてくれる。本当にありがたいと思う気持ちでいっぱいです。特に滋賀支部のみんなには感謝しかありません」。周囲のサポートが川北を励ましている。

川北は19年第34回ボートレース年間三賞で敢闘賞を受賞した。殊勲賞に石野貴之、技能賞は毒島誠、特別賞に大山千広とそうそうたる顔ぶれの中、川北は4人のうちの1人だ。

「日刊三賞を受賞できたのは僕の誇りです。こんな駄目な僕なのに、賞をもらえるなんて…。入院して表彰式に参加できなかったのが残念でした。それが心残りなんです」。

寂しそうにポツリと語ったが、胸を張っていい。1600人いる選手の中で、たったの4人しか選ばれない栄誉ある賞だ。グランプリのファイナリストより少ない数の中に選ばれたのだ。ただこういう見方も出来る。自らこの話題を持ち出して、心境を語ったと言うことは、完全復活して今度こそ壇上に上がるべく、自分自身を叱咤(しった)しているのではないかと。