11年2月、競輪学校(現競輪選手養成所)に女子36人が合格した。だが、彼女らの前に立ちはだかった壁は、高く険しかった。

同年3月に起こった東日本大震災という未曽有の災害、学校側も手探りの育成…。パイオニアとなった1期生の証言を基に、当時を振り返る。

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合格した1期生は経歴も年齢も多種多様だった。プロスポーツ選手、五輪代表選手を含むトップアスリート、将来の五輪出場を夢見る者、元モデル、子育て中のママさんレーサーや子育てが終わった主婦らが、ガールズ選手を志した。

入学前の11年3月11日、東日本大震災に見舞われた。1期生最年少の17歳だった小林莉子は「どうなっちゃうんだろう、と思いました。入学前の事前研修も中止になったので…」。それでも、関係者は歩みを止めなかった。4月末には、自転車未経験者が多い適性試験組の事前研修を実施。5月には最終的に35人が入学した。

トライアスロンから転向した加瀬加奈子は「男性教官は女性の扱い方が分からなかったし、手探り状態。教官に言い返したりもしていたから、今なら卒業できなかったかも…」と笑う。

一方、小学校教諭を辞めて輪界入りした中村由香里は「練習内容の説明が分かりにくい先生に『その紙、ください』って言って、私が説明したりしました」と振り返る。ただ、方向性は同じ。生徒も教官も、一丸となってデビューを目指していた。

加瀬は卒業記念女王として、中村は在校成績1位として、1期生を、その後のガールズケイリンを引っ張ってきた。

1期生は33人がL級ではなくA級2班として登録された。12年7月1日、平塚競輪6Rの号砲が“産声”となった。1着は地元平塚の中山麗敏(引退)。そして小林が初のシリーズ優勝者となった。

◆1期生の歩み 12年7月1日の平塚で小林莉子が初勝利で初優勝を飾った。小林は同年12月のガールズグランプリ(GP)でも初代女王となり、19歳9カ月2日の最年少GP制覇記録は現在も破られていない。一方、加瀬加奈子は昨年7月13日に青森で優勝し、41歳1カ月13日の最年長記録を樹立。結婚、出産、産休を経てつかんだ勲章だ。今年6月1日現在、1期生は20人が現役を続けている。