日本は2022年ワールドカップ(W杯)カタール大会アジア最終予選B組第5戦で、11日にベトナムとアウェーで対戦する。日本は2勝2敗の4位、ベトナムは4戦全敗の最下位だが、油断は禁物。その攻撃には明確な特長がある。
韓国出身の朴恒緒(パク・ハンソ)監督が率いるベトナムは守備に重心を置きつつも、隙あらば遠めから積極的にシュートを狙う。最終予選4試合で計36本のシュートを放ち、そのうちペナルティーエリア(PA)外から20本。その比率は56%を占め、B組6チームの中で最も高くなっている。日本のPA外からの22本と大差はなく、ゴールまでおよそ30メートル以上のロングシュートも目立つ。
同国のW杯最終予選初ゴールも9月2日の初戦サウジアラビア戦で決めたPA外からのシュート。こうした傾向は、日本が1-0で辛勝した19年アジア杯当時と変わっていない。
攻撃の中心はFWグエン・テン・リン(24)。今回の最終予選は4試合全てに先発し、チーム最多2得点。2次予選を含めると11試合7ゴールで、ベトナムの英雄レ・コン・ビン(元J2札幌)が記録した同国のW杯予選1大会最多記録に並んでいる。
身長180センチのFWは味方の遠めからのシュートがGKに防がれた後の「オフェンス・リバウンド」も虎視眈々(たんたん)と狙う。前節10月12日のオマーン戦でもGKがセーブした後のこぼれ球に反応してゴール。また、J2水戸でプレーした経験のある168センチのFWグエン・コン・フォン(26)のゴール前での俊敏なプレーも健在で、日本としては「ディフェンス・リバウンド」を集中して回収したいところだ。
現在3勝1敗で2位のオーストラリアも敵地のベトナム戦は苦戦し、ボール保持率70%を記録しながら守備を固める相手に枠内シュート1本にとどまった。その1本で1-0と競り勝ったものの、総シュート数は6本で、ベトナムの11本を倍近くも下回った。ベトナムは逆襲速攻から早いタイミングで足を振り抜き、PA外から6本のシュートを狙って屈強なオーストラリアを脅かした。
ベトナムのFIFAランクはB組最下位の98位で、28位の日本から見れば格下。当然ながら日本の方がボールを保持する時間は長くなりそう。2勝2敗で4位の日本は大差勝ちが必要。こぼれ球への集中力を高めるのは当然として、相手にシュートを打つ隙すら与えない戦いが求められる。
【石川秀和】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「データが語る」)
※データ協力:OPTA
〈アジア最終予選B組のPA外シュートの割合〉
比率 チーム 総数(内、外)
55.6% ベトナム 36(16、20)
45.8% オマーン 48(26、22)
44.0% 日本 50(28、22)
42.6% サウジ 54(31、23)
37.0% 豪州 54(34、20)
27.6% 中国 29(21、8)
42.4% 合計 271(156、115)
〈ベトナムの最終予選のPA内外別シュート数〉
月・日 スコア 対戦相手 シ(内、外)
9・2 1●3 サウジ 3(1、2)
9・7 0●1 豪州 11(5、6)
10・7 2●3 中国 13(6、7)
10・12 1●3 オマーン 9(4、5)
通算4試合0勝0分け4敗 36(16、20)
〈ベトナムの19年アジア杯PA内外別シュート数〉
1次L 2●3 イラク 7(3、4)
1次L 0●2 イラン 5(2、3)
1次L 2○0 イエメン 9(4、5)
決勝T 1☆1 ヨルダン 19(6、13)
準々決 0●1 日本 12(6、6)
通算5試合1勝1分け3敗 52(21、31)
☆=PK勝ち(引き分け扱い)