スペインリーグは、バルセロナの優勝で幕を閉じました。シャビ・エルナンデス体制2シーズン目で、2018-19シーズン以来4年ぶり27度目の優勝で締め括りました。

シーズン序盤から好調を維持したものの、一番お金を稼ぐことができるとされている欧州チャンピオンズリーグ(CL)ではあっさりとグループステージ敗退を強いられ、国王杯も逃すなど「稼ぐ」という部分においては首脳陣の想像を下回る形でのシーズンとなったことに間違いはないようです。幸運だったのは最大のライバルであるレアル・マドリードが終始不安定なシーズンを送ったことも影響していると現地では報じられておりました。

スペインリーグ優勝を決めたバルセロナのパレードに集まった人々(ロイター)
スペインリーグ優勝を決めたバルセロナのパレードに集まった人々(ロイター)

そのバルセロナですが、一部の報道にもあったように、日本円にして約1800億円の負債を抱えており、財政悪化に直面。さらに在籍している選手も全選手が現契約をまっとうすることを希望しているということで、クラブ首脳陣の思うような財政改善には至っていないというのが現状になるかと思います。

ここにきてリヴァプールを率いるユルゲン・クロップ監督の年俸が約1700万ユーロ(約25億4000万円)に対し、シャビ監督は、2021年当時率いていたアル・サッド(カタール1部)を退団してバルセロナにやって来る際、放出条項として設定された500万ユーロ(約7億5000万円)の半分を自らクラブに支払い、バルセロナに迷惑をかけないよう財政難の古巣を手助けしていたことが報じられていました。さらに、現在クラブから受け取っている給与は、バルセロナの監督としては通常よりはるかに低いものであり、ここにきて自身の功績に対して適切な評価を求めているとも報じられております。

優勝パレードでファンと喜び合うバルセロナ・シャビ監督(ロイター)
優勝パレードでファンと喜び合うバルセロナ・シャビ監督(ロイター)

クラブのレジェンドであるリオネル・メッシの契約がPSGとの契約が切れることもあり、ここにきてフリーでの獲得が可能という状況に。会長は是が非でもメッシをクラブに戻すと公言しておりますが、果たしてこれが吉と出るかどうかはわかりません。クリスティアーノ・ロナウドを売り時と判断し、一番状態が良い時にありとあらゆるファンの声に聞く耳を立てずあっさり売却するなど、財政管理・マネジメントにおいてはレアル・マドリーの方が一枚上手のように感じます。

バルセロナはどうしてもソシオと呼ばれる昔からの熱烈な地元のコアファンの意見を無視することができず、そもそも会長になるためにはこのソシオの心を掴まないといけないわけで、クラブの財政面の問題とは別のところで異なる力、ベクトルが働いてしまっているような気がしてなりません。

スーパーレジェンドであるクリスティアーノ・ロナウドの度重なるクラブハウスの訪問に一切目も向けず、気がつけば20代前半の若手選手を集めている最大のライバルであるレアル・マドリード。そのライバルを横目になんとかチグハグな現場を見事な手腕でまとめたシャビ・エルナンデス監督の功績はとても大きく、次期スペイン代表監督の呼び声も聞こえてくるほどではありますが、クラブの財政面が整わなければ当然淘汰されていかざるを得ないのかもしれません。

他のクラブでは、2011-12シーズンにはクラブ史上最高順位の4位でラ・リーガ1部をフィニッシュし、翌シーズンにはCLに参戦した、古豪・マラガが1997-98シーズン以来26シーズンぶりの3部降格となるなど、財政面との戦いに敗れたクラブは少なくありません。

世界を代表するクラブであるバルセロナがどのように立て直しを図っていくのか、そのアクション一つ一つがスポーツビジネス的な視点からしてもとても貴重なモデルケースとなることは間違いなさそうです。

【酒井浩之】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「フットボール金融論」