前半、ハティムにゴールを許すGK権田(撮影・河野匠)
前半、ハティムにゴールを許すGK権田(撮影・河野匠)

日本にとって2失点目がすべてだった。相手は左足のシュート能力がある選手と分かりながら、日本は5人の選手で囲んでいるのに責任の範囲が曖昧で中途半端だった。あの場面はMFではなく、DFの選手がプレスをかけてコースを消すべきだった。各自の「何とかなるだろう」という思いが痛恨の失点を招いた。今大会は安定していた守備だが、あの場面だけは約束事が破綻していた。

日本が先制していれば、イランとの準決勝同様に完勝していてもおかしくなかった。1点を先に失っても、この防げていたはずの2失点目がなければ優勝していてもおかしくなかった。1つのプレーで流れを大きく手放してしまう典型的な例だろう。両国の実力差はほとんどなかったし、後半はカタールを精神的に追い詰め、ほぼ動きを封じ込めていた日本だけに残念でならない。

ただ、負けたからといって森保監督のやり方が間違っているわけではない。日本人の特性である技術や意思疎通をベースにしたサッカーは、このまま伸ばしていけばいい。一方でカタールのようにポルトガルなど多くの外国出身者を受け入れて強化していくやり方も存在する。日本もまねをしろと言うのではなく、こういう多様化を図る国も世界のトップを淡々と狙っている現実がある。今大会はアジアの戦いだったが、世界は広いと勉強させられた意味では有意義だった。(日刊スポーツ評論家)