スペインがPK戦でまた負けた。前回大会も決勝トーナメント1回戦でロシア相手に74%もボールを持ちながらPK戦で敗退。これで、最多4回目の黒星。10年南アフリカ大会はPK戦がなかったから優勝できたが、PK戦になると準々決勝で2回、1回戦で2回敗退。圧倒的に攻めながらもPK戦で散るのは、もはや「お家芸」ともいえる。

もちろん、両者の精神状態は想像できる。攻め続けても得点できず「逃げ切られた」と思うか、粘り強く守り抜いて「逃げ切れた」と思うかは大きい。「負けられない」と置きにいくし「勝てばラッキー」と大胆になる。PK戦は劣勢だったチームや追いついたチームが有利と言われる。メンタルの部分は大きい。

それでも、ルイスエンリケ監督が言った「1000本蹴ってこい」は、壮大な「フリ」だった。20年欧州選手権準決勝でイタリアに敗れて宿題を課したというが、選手たちがまじめに取り組んだとは思えない。普段から練習していれば宿題は不要。「準備」を強調した時点で結果は見えた。

スペインの試合を見ていると、イライラすることがある。パスを回して回して相手を崩しきってフィニッシュ。もっと早く打てばいいのに、と思う。かつてプラティニが率いた「シャンパン」のフランスも同じだった。力技に頼らず、華麗なパスワークで相手をチンチンにする。勝敗に固執して一生懸命PKの練習をすることなど、彼らの「サッカー哲学」にはない。

もちろん、勝つことは重要だ。巨額が動くようになった近年は、勝利の価値も増している。それでも、代表にはそれぞれの国民性や歴史を反映したスタイルがある。3バックやハイプレスなどの戦術とは別に、国が持つ本来の哲学。サッカーのレベルはクラブチームの方が高いと思う。それでも、W杯が魅力的で圧倒的な人気を誇るのは、各代表が国民性や歴史を反映したサッカーをやるからだ。

82年スペイン大会のブラジルは2次リーグで敗退した。それでも、ジーコを中心に4人の黄金の中盤が見せたサッカーは創造性にあふれ、技術も高く魅力的だった。ブラジル国民は帰国したチームを大歓迎、5回の優勝チームをさしおいて「82年が最高」という国民は少なくないという。

手段を選ばず勝利のために全力を尽くすドイツ(今回はあっさり消えたが)、守備を重視して1得点で勝ちきる「カテナチオ」のイタリア(今回は予選敗退したが)、パス回しに固執して勝負弱さを露呈する「無敵艦隊」スペイン…。各国のカラーが出るから、W杯は見ていて楽しい。

今大会、日本の戦いには「らしさ」が出ていた。スピードを生かした攻撃や高い位置からのプレスなど戦術面とは別に「哲学」の部分もだ。最後まで諦めず、献身的にプレーする。監督やチームメートを信じ、一丸で戦う。ピッチ上だけでなく、サポーターまで含めた振る舞いも世界中から高く評価された。ドイツ、スペイン戦の歴史的勝利とともに、それが今大会の日本の大きな収穫でもある。