J3アスルクラロ沼津は7月23日、J2昇格に必要なスタジアムの要件が満たせなかったとして、来季のJ2ライセンス申請を断念しました。クラブ、県、市の関係者、県サッカー協会の関係者らが集った「第3回静岡県東部地域サッカースタジアム構想連絡会」を沼津市内で開催。申請期限は6月30日で、沼津の渡辺隆司社長(60)が、取材に応じて「申請断念」を明らかにしました。

 過去2回の構想連絡会と同様に、今回もライセンス取得の壁になっている県営のホーム愛鷹多目的競技場の改修や、新スタジアムの建設の問題協議しました。特に金銭面で、厳しい現実が明白になりました。仮に競技場改修を選択した場合、取得条件には、1万席以上の観客席(現在は5000席)、大型映像装置の設置、1500ルクス以上の照明設備(現在は500ルクス)などが必要です。市の調査では、総額約15億~20億円がかかる見込みで、費用をどこが負担するのかも未定。クラブ単独での負担は非現実的で行政頼みの状況ですが、渡辺社長は「今後も継続して、各方面に協力を求めていきます」と話しました。

 J3参入初年度の昨季は、最終節まで優勝争いを演じ3位。昇格を目指し戦う今季も第19節を終え、現在2位と好調を維持しています。しかし、クラブ側がJ2ライセンス申請を断念したことで、昇格条件の「2位以内」をクリアしたとしても、来季もJ3で戦うことが決まりました。選手たちは口々に「ピッチで結果を出すだけです」と気丈に話しますが、本音はどうでしょうか。J2昇格の光が見えない中、クラブ側が、選手、吉田謙監督(48)をいつまで引き留められるのでしょうか。

 今回の協議会は、時系列的にも「申請断念」の結論ありきの状態で開かれ、2月の第2回構想連絡会と内容を比較しても、進展が見られません。ただ、クラブ側もこの5カ月間で動きは見せていました。

 渡辺社長は、5月上旬、当選間もない頼重秀一沼津市長(49)と対面したといい、市長の印象を「スポーツに理解があり、非常に聡明(そうめい)な方です」と期待を寄せています。頼重市長も「地元のクラブですので、市としても支援して参ります」と前向きな発言をしています。スタジアム問題解決には県への働きかけだ第一ですが、まずは市との結束を固めること。今後も、沼津担当記者として行政の動向に注視していきます。


 ◆古地真隆(こち・まさたか)1993年10月14日、静岡県沼津市生まれ。今年2月、静岡支局員として入社。J3沼津、アマチュアサッカーを担当。スポーツ歴はサッカー、野球。