東京にとって、非常に痛い知らせだった。18日、東京オリンピック(五輪)世代のDF中村帆高(23)の長期離脱が発表された。右膝の半月板損傷。全治は約6カ月と診断された。

チーム内でも屈指のハードワーカーとして信頼を集めていた右SB。温和な性格で、取材時に口にする言葉も決して勝ち気ではない。常に反省点を挙げ、改善に真摯(しんし)に取り組んできた。明大卒のルーキーだった昨季は開幕戦でスタメンに抜てきされた。大学との強度の差を素直に受け入れながら地道に練習を重ね、川崎F戦では売り出し中の同年代MF三笘薫と真っ向からマッチアップし、体を張った。

中村自身、もとはプロになる将来すらも描いていなかった。日大藤沢高(神奈川)時代は、卒業後にサッカーを続けるつもりもなかった。指導者に強く勧められる形で明大のセレクションを受けたところ合格。そうして進んだ明大時代も、大学日本代表として参加した米国遠征時に現地から就職活動のエントリーシートを送付したことも。それくらい中村にとってプロは遠い世界に思えていた。ただ、本人以上に、周囲がその潜在能力を放っておかなかった。

プロ1年目での昨季の努力は報われ、昨年12月のU-23日本代表候補合宿に選出された。各世代別も含め、初めての代表だった。地元・東京で行われる五輪を目指し、同胞のDF渡辺剛、MF安部柊斗、GK波多野豪らとともに研さんを積んでいた。残り約3カ月に迫っていた五輪は、絶望となった。

昨夏に同ポジションの先輩DF室屋成が海外移籍した際、「頼んだぞ」と声を掛けられた。「ひとつ、どんな困難があっても目を背けないことを誓って、やっていきたい」と、気持ちを語っていた。今は悲願の初タイトルを目指す東京の一員として、1日も早い復帰を目指す。【岡崎悠利】