自宅前のソメイヨシノが葉桜に変わり始めたころ、うれしいニュースが舞い込んだ。保育教諭時代の教え子で、WEリーグ・アルビレックス新潟レディース(L)U-15で主将を務めるDF登坂夢愛さん(とさか・むあ=水原中3年)が、4月18~21日に千葉・JFA夢フィールドで行われた女子U-15トレーニングキャンプに初招集された。うれしすぎて早速、高校の同級生でもある父真人さんと新潟L広報に連絡を取り、同キャンプ帰りの夢愛さんへの取材を申し込んだ。

私の保育教諭引退試合(!?)ともなった、こども園での運動会に駆けつけてくれて以来約2年半ぶりの再会。取材前日、真人さんから「かなり緊張してるようです!」とLINEが入ったが、当日の練習メニューがリカバリーだったこともあり、常に笑顔で汗を流していた。練習後の取材も和やかムード。夢愛さんは「(代表選出が)やっと(私に)来たか、と思った」と軽く冗談を飛ばした後、「同世代のレベルの高さを感じたけど『自分も負けてない』とも思った。(代表)常連になれるように頑張りたい」と続けた。

同キャンプは3月に予定されていたJFAエリートプログラム女子U-14の代替事業として実施。複数ポジションをこなす夢愛さんはキャンプ中に行われた対外試合や紅白戦では右サイドバックに入り、100メートル走12秒台のスピードを生かした攻撃参加をアピールしたとのこと。また、夜のミーティングでは食事や睡眠といったオフ・ザ・ピッチの重要性を改めて実感したという。全国から集まったメンバーとも積極的にコミュニケーションを取るなど、充実した4日間を過ごしたようだ。

取材後、次の仕事先に向かう車内で過去を振り返る。記者に転職する前、私はJ1磐田や札幌でプレーした清野智秋氏、元アルビレックス新潟シンガポールの鎌田啓義氏らを輩出した「社会福祉法人旭会おとぎのくにこども園」に12年半、勤務。そのうち4度、年長クラスを受け持ち、夢愛さんは3度目の卒園児だった。当時から運動神経抜群。水原サッカー少年団が、町の年長クラスを集めて開催する「サッカー交流会」ではキレキレのドリブルとゴールで会場を沸かせるなど、その頃からサッカーセンスの良さを発揮していた。

クラスのみんなでアルビレックス新潟の試合を観戦したこともあった。キックオフ前にはピッチ脇でウオーミングアップする選手を見つめ、試合ではFW田中達也(現新潟トップチームコーチ)やMFレオ・シルバ(現J1名古屋)のゴールに盛り上がった。「○○ちゃんたちが、試合前に鈴木武蔵選手と酒井宣福選手からボールをもらったよね」と当時を懐かしみ、「いつかあの舞台に立ちたい」という夢も聞かせてくれた。

もちろん、私は年中、年長クラスで担任をしただけでサッカーを教えた身ではない。今後も陰から夢愛さんの活躍を心から願うばかり。「今年はキャプテンとして、チームを勝たせる選手になりたい。結果を出せば(代表への)アピールにつながると思います」と言葉は力強い。目標とする世代別の女子日本代表定着に向け、ケガをせず、突き進んでほしい。【小林忠】

◆小林忠(こばやし・ただし)1985年(昭60)6月26日、新潟県阿賀野市(水原町)生まれ。水原サッカー少年団で競技を始め、北越高2年時に全国高校選手権出場。保育教諭としてこども園に12年半勤務した後、ひょんなことから19年途中に入社。20年からJ2新潟担当。

(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「サッカー現場発」)

13年5月、当時J1だった新潟の試合を観戦(ご家族提供)
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世代別の女子日本代表定着を狙う新潟L・U-15の登坂
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