<高校サッカー:滝川二5-3久御山>◇決勝◇10日◇東京・国立

 滝川二(兵庫)が久御山(京都)を破り、全国3778校の頂点に立った。

 チームをまとめあげたFW浜口孝太主将(3年)の魂を込めた2発が優勝に導いた。「1点目のトラップも、2点目の抜け出しも得意な形」。前半24分の先制点に続き、3-1で迎えた後半14分にダメを押した。昨年1月に手術した右足首や臀部(でんぶ)の痛みにも耐え90分を走り抜いた。「最高の仲間に出会えました」と笑顔で金メダルを握り締めた。

 幼少期は集中治療室に入るほど体が弱く、2歳で阪神大震災を経験した。近所では一家だけが生き残り、大阪港のフェリーの上での生活も余儀なくされた。当時の記憶は、揺れる船内の保育園の食事で、オムライスをこぼして泣いたことくらい。「運もあったし、生かしてもらった。地元の人にも喜んでもらえればうれしい」。今でも毎年1月17日午前5時46分には母と一緒に黙とうを続けている。母あけみさん(49)も「サッカーがひと回り成長させてくれた」と涙した。

 入学後、やめようと思った時期もあった。神戸ジュニアユース時代にコンビを組んだ神戸FW小川や、関西選抜の同僚のG大阪FW宇佐美らの飛躍に向上心を失いかけた。鎌田コーチ(当時)の「ハードルを下げたら伸びないぞ」の激励で再び前を向いた。今後は青学大に進学予定。「人として学びながらプロを目指してみようかな、と少し自信がついた」。新たな目標へスタートを切った。【鎌田直秀】