アジア杯で2大会ぶり5度目の優勝を狙うサッカー日本代表が、2月1日の決勝でカタールと対戦する。

29日の準決勝で開催国UAEに4-0で完勝したカタールは初の決勝進出。観客約3万9000人ほぼ全てが相手サポーターという完全アウェーの中で、22歳のエースFWアリが大会最多得点記録に並ぶ8点目を決め、守っては全6試合無失点。日本とは過去2勝4分け2敗と互角の成績を残す、中東の強敵の秘密に迫った。

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耳をつんざくような大ブーイングにもカタールの選手は冷静だった。17年の両国の断交により、ほぼUAEサポーターしかいない中、アウェーの洗礼は止まらなかった。試合前の国歌斉唱でやじが飛び、アリがチーム2点目を挙げると、カタール側のゴールへ靴やペットボトルが一斉に投げ入れられた。

UAEの王子が入場券を買い占め、国民に無料配布した一戦。屈辱的な仕打ちを受けながら、日本より2歳若い平均年齢24・6歳の強国は落ち着いていた。カタールのサンチェス監督は「多くの感情がある難しい試合だった」と振り返った。

今大会際立った活躍をするアリの決定力は、日本にとって脅威だ。だが、カタール紙「ドーハ・スタジアム」のヨルダン人記者は「一番怖いのはアリじゃない。アリを生かす組織的な戦い方だ」という。

日本が02年W杯日韓大会で初めて16強入りしたように、カタールは自国開催の22年W杯に向けて国家規模で強化を進める。膨大な資金をかけて作られた育成機関「アスパイア・アカデミー」では準決勝に出場した14人のうち、先発7人を含む9人がその出身者。語学教育も義務づけられる。

バルセロナの育成部門で指導経験がある、スペイン人で43歳のサンチェス監督も同アカデミーのコーチからカタールへ引き抜かれた。年代別、A代表の指揮官に就任し、同記者は「12年から7年間、サンチェスの下で戦っている選手が多い。家族同然だ」。

アリも実際に「監督は父親のようだ」と言い切る。実際に指揮官の下で14年U-19アジア選手権初優勝を飾った。さらにカタールの代表選手は、今冬に中島翔哉が完全移籍し、アリが所属するアルドゥハイルなどほぼ国内クラブに所属する。身体的に日本と大差ないが、計画的に成長する組織力は厄介だ。FIFAランキングで日本の50位に対してカタールは93位。アジア杯で過去最高はベスト8だったが、日本にとってはイラン以上の強敵になりそうだ。【小杉舞】