五輪代表が別人のように、生き生きと躍動した。A代表との試合で、0ー3と完敗した姿はそこにはなかった。原動力は、紛れもなくDF酒井宏樹(31)吉田麻也(32)MF遠藤航(28)のオーバーエージ(OA)枠の“先輩”たちだった。

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「おい」。DF吉田麻也の怒声が響いた。後半26分。ボランチのMF田中が、パスを出した後にタックルを受けた。悪質なファウルに、吉田は黙っていなかった。いち早く相手に詰め寄った。「おい」。再び怒声を上げ、後ろ襟をつかんだ。ベンチにOKサインを送る田中をよそに、後ろ襟をつかんだまま、突き飛ばした。五輪代表にオーバーエージ(OA)枠として参加するA代表のキャプテン。戦う姿勢を闘志全開で示した。

右サイドバック(SB)のDF酒井宏樹は“4列目からの飛び出し”で“後輩”を活性化させた。前半45分。敵陣中央のMF田中から、右サイドの裏へ浮き球のパス。絶妙な抜け出しでボールを受け、ペナルティーエリア右から速いグラウンダーのクロス。オウンゴールを誘発した。

幾度もオーバーラップすることで2列目の右でプレーするMF久保、MF堂安らの選択肢が増えた。時に酒井をおとりに使い、自ら仕掛け、状況を見て、サイドからのクロスを選ぶなど、スペースを有効活用した。ボランチの遠藤航は、相手の攻撃の芽を摘んだ。前半16分。先制点となった堂安のボレーは、相手のゴールキックを遠藤航がクリアしたことで生まれた。圧倒的な存在感を見せる中、酒井はさらなる高みを目指す。「もう2アシストくらい出来たし、1回抜かれたし、1回も抜かせないといけないと思う。完璧を求められる立場」と頼もしかった。

五輪代表は、3日のA代表との試合に0-3で敗れた。その時は遠藤航が途中出場。酒井、吉田は出場がなかった。OA枠の3選手が初めてスタメンでそろった一戦。堂安も「今日はOA3人が頼もしすぎた。素晴らしいOA。派手な選手じゃないのに、あんなに頼もしいことを肌で感じた。後ろに3人がいるだけで、前は伸び伸びとプレーできた」と最敬礼。守備のスペシャリスト3人が、五輪代表にガッチリ加わった。【栗田尚樹】