森保ジャパンが崖っぷちで踏みとどまった。日本はB組首位のオーストラリアに2-1で勝利し、勝ち点3を得た。前半8分、先発に抜てきされたMF田中碧(23)が先制。同点に追いつかれたが、後半41分にMF浅野拓磨(26)が相手のオウンゴールを呼び込み、勝ち越した。引き分け以下なら進退が問われる重要な一戦で、森保一監督(53)は陣形を4-2-3-1から4-3-3に変更。積極的な采配が功を奏した。W杯出場が確定するB組2位以内へ希望をつなぎ、次は11月のアウェー2連戦に向かう。

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スタジアムに君が代が流れると、森保監督の目には涙が浮かんでいた。「厳しい状況に置かれていることは承知している。まだまだ我々次第」。批判にさらされ、計り知れない重圧がかかる。肩を組んで歌い終えると、腹をくくったように表情は元に戻った。

新鋭・田中の1発で先制。前半8分、MF南野の左クロスに対して相手が処理を誤り、ボールはゴール前にいた田中のもとへ転がった。フリーで冷静にGKの動きを見ながら右足を振り抜き、左隅へ。フィールド選手全員が田中のもとへ駆け寄り、もみくちゃになった。負けたら終わりの重圧、危機感-。抱えてきた感情があふれ出た。

森保監督が土壇場で見せた勝負師の一面だった。サウジアラビア戦で失点につながるミスがあったMF柴崎を控えに回し、フルメンバーでのA代表ではプレー経験がない田中を抜てき。陣形もボランチ3人を配した4-3-3に変更した。「私の職については、1戦1戦、生きるか死ぬかがかかっていると思っている」。手を抜いたことなど1度もないが、大胆な采配が当たった。

後半25分に直接FKをたたき込まれ、同点。ホームで最低条件の勝ち点3がふたたび危ぶまれたが、救ったのは森保監督の広島時代の教え子であるFW浅野だった。後半40分、ロングパスを受けて一気にドリブルで攻め込み左足シュート。GKが弾いてポストに当たったボールを相手DFがクリアできず、そのままゴールに入った。ネットが揺れた瞬間、指揮官はコーチに飛びつかれて少し照れくさそうに抱擁すると、すぐさまピッチの田中に次の指示を送った。

オマーン戦での衝撃的な敗戦から始まった最終予選。前半戦のヤマ場とみていた今月の2試合を迎える前につまずき、サウジアラビア戦にも負けた。「負けて気づかされることはたくさんある。いかに前向きに変換して次に臨めるか。道が続く限り、その考えは変わらない」。オーストラリアに敗れていれば、その“道”もついえかけていた。この日、最低条件である勝利を手にしたことで、機運は上がった。まだ勝敗を五分に戻しただけ。11月にはアウェー2連戦と厳しい戦いは続くが、森保ジャパンが確かに息を吹き返した。【岡崎悠利】

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