日本代表森保一監督(54)が7日、W杯欠場が決まったDF中山雄太(25=ハダースフィールド)の代役については明言せず、W杯カタール大会に出場する32カ国中、一番乗りで現地へ飛び立った。SNS時代の現代社会。指揮官は辛辣(しんらつ)なコメントでさえ糧とし、一周回って悲劇の地・ドーハで笑う。
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夜の成田空港。飛行機の発着音、吹き付ける横風が、独特な空間を演出していた。報道陣の前に現れた森保監督はいつも通り、スーツ姿でビシッと決めていた。本大会に出場する32カ国の中で一番乗り。次に戻って来るのは12月。今よりも、肌寒さは増す。「コートは持って来ていないです」と笑った。「出来るだけ、帰国はW杯の一番遅いタイミングで帰って来たいです」。ベスト8以上を-。そう言わなくとも、間接的に表し、搭乗ゲートをくぐった。
寒さを和らげるコートがなくとも、待ち受ける批判にも、森保監督は、裸一貫で矢面に立つ。「エゴサーチはしないんですけどね」と笑いながら「タイトルだけ見ても、きついなというものも見るけど、この職業をしている限りは賛否両論はある。ネガティブな意見もあるし、ただ、批判の方が多いだろうと感じている」。割り切っている。
勝てば官軍。負ければ賊軍。そうした環境に身を置いていることを理解している。「勝って称賛されることもあるが、『何でこんな勝ち方しか出来ないんだ』と言われることもあるし、負けたら批判だらけ。プロの世界では当たり前かなと」。サッカーの普及を感じているからこそ、前向きに捉えている。「賛否両論含めて、サッカーを見てもらえているということ。気にならないことはないけども、気にしないようにはしているし、見てくれている目の数が多いほど、サッカー文化が広がってくれているんだなというふうには捉えています」とうなずいた。
一方で、世の中には、SNS上に、はびこる辛辣なコメントで、心を痛める人も多くいる。命を落とす人もいる。自身も広島の監督時代に、家族が批判されることも経験している。森保監督も「単純にその、自分は大丈夫だというだけでは済まないと思う」。
その中で、そうしたコメントに目を通す。それは、新たな視点が落ちているから。「割と、批判の中でもヒントになることも多くて。そういう見方もあるんだと気づかせてもらうこともある。例えば、自分は守備が改善点だと思っていたら、攻撃が改善だと言う人がいたり。見方は千差万別。価値観もいろいろある、サッカー観もそう。いろいろあっていい」と固執することはない。
警鐘も鳴らした。
森保監督 自分が結果出せなかった時に「監督としてダメだ」とか「力がない」とかはいいけど、「結局日本人はダメじゃないか」というコメントがあって、単純に日本人と外国人を比較して外国人がいいとか、ということを言われる時に、日本人が日本人を否定しているとか、自分たちが下だと言っているようには、なってほしくない。
日本を代表し、世界への挑戦が始まる。「全て起こっていることは監督の責任であるべき」と選手、スタッフに降りかかる批判を全て受け止める。「新しい景色を一緒に見て、一緒に喜びたいと思っています」と言い、カタール行きの航空機へ乗り込んだ。【栗田尚樹】
◆W杯カタール大会の開催時期 期間は11月20日の開幕から12月18日の決勝まで。これまでは、欧州各国リーグがオフ期間になる6、7月だったが、今大会は酷暑の夏季を避けて11、12月の変則日程で開催。冬開催となったことで、各国リーグはシーズンのまっただ中となり、中断期間を設けた。試合消化で過密な日程となり、開幕の前週末まで試合が組み込まれている。選手の負担が大きくなること、大会前キャンプの時間が大幅に短くなることなど、課題が残っている。

