【ドーハ19日(日本時間20日)=佐藤成】チーム屈指の負けず嫌い、MF川崎颯太(22=京都)の一撃が大岩ジャパンを大きく前進させた。パリ五輪アジア最終予選を兼ねるU-23アジア杯カタール大会1次リーグ第2戦UAE戦で2-0に貢献する1得点。B組2位以内を確定=決勝トーナメント進出を決めた。首位突破が懸かる22日の第3戦韓国戦でも3連勝に導く。

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川崎の真骨頂だった。初戦で出番がなかった背番号6は、試合開始からギラギラ感をあふれさせてプレーした。前半の追加タイムにドリブルでエリア内に進入し、倒されてPKを獲得した…はずが、VAR介入で取り消しに。後半16分にも仲間の得点が再びVARで消された鬱憤(うっぷん)を晴らすかのように、その5分後、DF大畑の左クロスにニアで頭を合わせた。

「もどかしい気持ちが多かった中、1-0のままジリジリいくよりも、2-0にできたことで非常に楽になった。いいボールが来たので決め切れて良かった」

先月は、落ちていた。3月22日、地元京都で行われたマリ戦。自身のミスから失点し、試合も1-3で敗れた。チームメートの信頼とともに、自信も失いかけた。迎えた今大会。中国戦は先発を外れた。途中出場の声が1度はかかったが、状況が変わり投入も見送られていた。2戦目で出番。燃えた。「ミスにビビるだけではなく、自分もチャレンジする気持ち」。攻めの姿勢が挽回につながった。

絵に描いたような文武両道だ。甲府の下部組織で育ち、ユースから「勉強もサッカーもレベルの高いところで成長したい」と古都へ移った。国立の山梨大教育学部付属小中から、京都ユースが提携する立命館宇治高へ。トップ昇格を果たしつつ進学もし、今春、立命館大を4年で卒業した。大学ではスポーツ社会学を専攻。ゼミではG大阪のサポーターたちとも交流した。

頭脳明晰(めいせき)なクールタイプ…かと思いきや、泥くささが魅力だ。「小さい頃から負けず嫌い。『あいつに負けたくない』と努力して、ここまで来られた。悔しい気持ちを失ったら成長がなくなる」。マリ戦、中国戦で味わった辛酸を教訓に進歩し、文句なしのプレーヤー・オブ・ザ・マッチ。日替わりヒーローの登場で、チームの結束はいっそう強まっている。