<15年11月、平塚合宿>

 本番モードに入った。アジア最終予選まで残り1カ月半。海外組とJ1チャンピオンシップ、J2昇格プレーオフに出場するチームの選手を除く25人が集まった。

 合宿初日。シーズン終了直後だったことで、手倉森監督は「Jリーグが終わって、お疲れさんと言いたいところだけど、代表チームには休みがない」と選手に伝えた。最終予選メンバー23人の絞り込み作業が始まった。

 最終予選のメンバーからは漏れたが、注目を集めたのは、追加招集で合宿に参加したDF佐藤和樹だった。合宿への追加招集が発表された同日(11月23日)に、所属していた名古屋から契約満了が発表されていた。代表合宿参加しながら、新たな所属先も探さなくてはならない。まさに異例の“就活合宿”だった。佐藤は「どこか拾ってくれないかな。自分が選べるぐらいのプレーをしたい。ポジティブにチャンス」と話していた。

 佐藤については、こんな不運もあった。合宿最終日の湘南戦。後半途中から出番が来た。多くのクラブの強化担当も視察に訪れ、誰より燃えていた。最初のプレーで相手と接触。右目のコンタクトレンズを落とした。約5分間、焦点が合わない状態でプレー。「人生初」と苦笑いだった。今季は水戸でプレーする。

 ▼練習試合(対J1湘南)1△1【得点者】鈴木武蔵

 合宿の最終日には湘南と練習試合を実施。本番を想定した一戦だった。通常、湘南は3バックを採用しているが、中東諸国や北朝鮮が4バックを採用していることから、手倉森監督は湘南・曹監督に4バックを要望した。

 試合は前半に1点を先制され、後半はシステムを「4-2-3-1」から「4-3-3」に変更。試合終了間際の後半43分にFW鈴木武蔵が右足で同点弾を決め引き分けに何とか持ち込んだ。

 ずっと言われていた得点力不足の不安は解消されなかったが、鈴木は復活を印象づけた。

 鈴木が投入されたのは後半40分。3分でチームを敗退の危機から救った。痛めていた左太ももの状態が万全ではない中でも、結果を残した。鈴木は「(状態が)満足でない中で、点を取れたことはうれしかったです」。14年秋のアジア大会は5戦5発でチーム得点王。だが、その後はけがに苦しんでいた。頼もしいエースが帰ってきた。