【ドーハ4日=木下淳】U-23(23歳以下)日本代表の主将、MF遠藤航(22=浦和)がインフルエンザに感染した。リオデジャネイロ五輪アジア最終予選を兼ねるU-23(23歳以下)アジア選手権(12日開幕)に向けて開催国カタールで直前合宿を始めた前日夜、発熱を訴えてチーム医師が検査した結果、陽性と判明した。少なくとも発症から5日目の7日まで完全隔離されることが決定。6、7日の練習試合を遠藤抜きで戦わざるを得なくなった。

 決戦の地カタールに入った手倉森ジャパンに、いきなり災難が降りかかった。2日目の練習に、A代表も兼ねる大黒柱、遠藤の姿がない。日本協会の担当者によると前日3日夜にインフルエンザを発症。練習後、取材に応じた手倉森監督は「航がインフル? ホントですか?」と、とぼけた後「キャプテンが準備期間から外れる。ほかの選手にはカバリングが大事だと言った」と、対応を余儀なくされていることを明かした。

 チームは3日朝にドーハへ着き、夕方から初練習。遠藤はハマド国際空港で代表取材に応じ、練習も全メニューをこなしていた。ところが、夕食時に「熱っぽい」と体調不良を訴えた。体温を測ると37度8分。チーム医師の検査でインフルエンザ陽性を示す反応が出たため、少なくとも5日間は隔離されることが決まった。手倉森監督が「直感で遠藤を2人部屋から1人部屋に変更していた」のが不幸中の幸いだったが、熱は一夜明けて38度4分まで上昇。宿舎で静養した。

 痛い。最終予選は16チームが3枚しかない五輪切符を争う一発勝負。前評判が高くないU-23代表を救うはずの遠藤が、開幕に向けて状態を上げられなくなった。チームは6日にU-23シリア、7日にU-23ベトナムと練習試合を行う。1次リーグ初戦、13日の北朝鮮戦に備える最終確認の場に遠藤は立てない。攻守の要として「へそ、中心に航を据えてきた」(手倉森監督)だけに影響は大きい。

 今後は感染拡大とも背中合わせになる。指揮官も「拡散に気をつけないと。チームがチームじゃなくなってくる」と危機感を隠せなかった。さらに、成田からUAE経由で16時間を超えたフライト中、極めて近い距離でチームメートと行動していた。ビジネスクラスを利用したことで座席間は広がったが、カーテンで仕切られるため“密封”された空間に。遠藤が機内でマスクを着用していたことが救いだが、ウイルスまん延の可能性は否定できない。

 遠藤は予防接種を受けていたが発症した。何かが起こる最終予選。しかも今回から短期集中開催のセントラル方式になった。従来のホームアンドアウェー方式と比べて立て直す時間がない。その中で2次感染の恐怖とも闘うことになった。

 ◆遠藤航(えんどう・わたる)1993年(平5)2月9日、横浜市生まれ。南戸塚中から湘南ユース。高校3年時にJデビュー。11年トップ昇格。16歳から世代別代表で、U-19代表時代も主将を務めた。家族は夫人と1男1女。利き足右。178センチ、75キロ。血液型O。