松本山雅は、前日4日が練習中に心筋梗塞で倒れ11年に死去した元日本代表DF松田直樹さん(享年34)の命日だったが、首位湘南ベルマーレに逆転負けし、松田さんに勝利を送ることが出来なかった。

 松田さんの背番号3を背負うMF田中隼磨(35)は、自らのミスから逆転ゴールを許し、「プロに入って初めてくらいのミス…眠れないです」と唇をかんだ。前半37分、自陣ゴール前で相手に厳しくプレスをかけられてボールを失い、そこからのクロスが湘南の逆転ゴールとなった。

 そのプレスをかけてきた相手が、松田さんとともにJ1横浜F・マリノスでプレーした最後の年となった2008年、同クラブのユースに所属していたFW端戸仁(27)だったのも皮肉だった。田中は「本当に大切な試合でミスをして…情けない。信じられない。昔から、ああいう失点につながるミスはなかった。しっかり考えないといけない」と自らへのダメ出しを繰り返した。

 この日の練習着には、胸に3番、背中には「3 松田直樹」とプリントされていた。松田さんの死後、命日の前後の試合前のアップ時に着用してきたという。今季は4-0で大勝した7月29日のツェーゲン金沢戦と、湘南戦のみ着用することになっていた

 田中は試合後、両手で顔を覆って悔しがった。松田さんの命日翌日の試合に特別な思いを抱いていたかと聞かれると「そういう大切な試合で、勝つことが出来なくて、非常に悔しいです。自分のミスも含めて結果が出なかったことが(表情に)出たんだと思います」と無念の思いを吐露した。

 松田さんの死から、6年が経過した。田中は「今日に限らず、僕自身、強い気持ちを持って戦っていますし、毎試合、みんな遺志は引き継いで戦っていると思う。変わることのない意思を持ち続けて、僕らは戦わなければいけない」とかみ締めるように言った。【村上幸将】