2位川崎フロンターレが主将でエースのFW小林悠(30)の2発などでベガルタ仙台に3-2で逆転勝ちした。前半42分にMF家長が2枚目の警告で退場し、その後2失点。絶望的な状況だったが、後半37分にDFエウシーニョのゴールで勢いづくと、同39、42分に小林がミドル弾。前節でシーズン自己最多得点の15に並んでいたエースの17点目が決勝点となり、優勝戦線に踏みとどまった。

  「こういう試合を勝つチームがタイトルを取るチームだ」。ハーフタイムに鬼木監督のゲキを受けた川崎Fは、10人でも勝利をあきらめていなかった。小林が前からプレスをかけ、高い位置でボールを奪いカウンターを繰り出す。後半37分にエウシーニョ弾で「等々力劇場」の号砲を鳴らすと、2分後に小林がペナルティーエリア外の中央で左足を振り抜き同点。その3分後に再び小林の右足ミドルで逆転。5分で3発を繰り出すミラクルを起こした。

 小林は「こういう時に決めるのが自分だと強く思ってやっていた」。ミスも目立ったが、決定機をものにしてエースの役割を果たした。2本ともペナルティーエリア外から打ち「しんどすぎてボールが運べなかったので、打っちゃえと思って…」と笑った。

 今季から主将マークを巻き、シーズン序盤はその重責で点が取れない苦境もあったが、5月ごろ「FWとして点を取ることが主将の仕事」と切り替えた。この日で自己記録を塗り替え、17得点。9月に30歳を迎え「自分が20代前半に思っていた30歳より全然動けている」と話し「(大久保)嘉人さん(現東京)も得点王とったのは30歳を超えてから。FWは年を重ねるごとにゴール前の感覚が研ぎ澄まされていくと思う」と年とともに自信は深まる。

 17得点に「仲間のおかげ」と感謝したが、連動したプレスが皆無だった前半の戦いには厳しかった。「前半の戦いを見つめ直さないとこれから先、厳しくなる。今日の結果で浮かれている選手はいない」と笑顔はない。首位鹿島と残り5試合で勝ち点差は5。点を重ねて引っ張る主将が初タイトルへと導く。【岩田千代巳】

 ▼2点差逆転勝利 川崎Fは前半42分にMF家長が退場しながらも0-2から逆転勝ち。後半36分までの2点ビハインドから同37、39、42分と3点を集めた。J1の最大逆転試合は3点差で、90分試合では過去に7度記録されているが、今回のように残り10分を切ってから2点差を逆転したのは、98年11月3日の浦和戦での横浜M(後半39分まで0-2→3-2)、06年11月11日の川崎F戦での東京(後半37分まで2-4→5-4)に次いで11年ぶり3度目。1人少ない状況では今回の川崎Fが初めて。