ヴィッセル神戸MFアンドレス・イニエスタ(34)が、2戦連発のゴールを決めた。首位サンフレッチェ広島に先制された直後の前半17分。来日初得点を挙げた前節同様にFWルーカス・ポドルスキからのパスを受け、DF2人をかわし右足で芸術的な同点ゴールをたたき込んだ。16年在籍したバルセロナで442試合35得点(リーグ戦)のゲームメーカーが移籍後は4試合2得点。1-1で引き分けたが、ストライカーとしても新たな可能性を広げていく。

 DF2人は魔法をかけられ、固まったように見えた。先制された直後の前半17分。右サイドのポドルスキからパスを受けた左サイドのイニエスタが、まずDFと1対1になり、2秒ほどの間合いを置いてかわす。さらに中央に切れ込み、別のDFをドリブルでかわし、自ら作ったスペースで右足を振り抜いた。前節ジュビロ磐田戦に続き、ポドルスキのパスから今度は完全な個人技で芸術弾を決めた。

 バルセロナではスペインリーグで442試合出場で35得点。それが日本では4試合2得点とストライカーの姿を発揮。「(2試合連発は)確かに普通のことじゃない。ただ(スペイン時代と)特に変わったとは思っていない。ゴールか違う形なのか。いいプレーをしてチームに貢献するのが一番大事だと思っている」。2万5499人の観客を熱狂させた1発にも、イニエスタは冷静だった。

 吉田監督は驚きを隠さない。「バルサでもそこまで決める選手ではなかったから。連続して取ってくれるとは思っていなかった」。34歳にして新たな可能性も示すイニエスタ。酷暑の中、2試合連続フル出場と戦い抜いた。周囲を驚かせるボディーバランスと肉体の強さ。それを支えるのが日ごろのケア。練習後、クラブハウスから出るのは遅い。関係者は「体のケアにはびっくりするぐらい時間をかける」。メディカルスタッフとして、バルセロナに所属したエミリオ・リカル氏(57)を招聘(しょうへい)。“チーム・イニエスタ”に支えられ、171センチ、68キロの体がスーパープレーを生む。

 首位広島と引き分け、勝ち点差を縮めることはできなかった。ただ、神戸にはスペインの至宝がいる。「これからもいいプレーをしてゴールを重ねていければ」という言葉が力強かった。【実藤健一】