元日本代表で06年W杯ドイツ大会に出場したFW巻誠一郎(38)が16日、熊本市内で引退会見を開き、「すべてサッカーを通して学んできた。サッカーは僕の人生すべて」などと語った。

今季からJ3に降格したロアッソ熊本で、サッカー人生の幕を引くことにし、今後について「子どもの夢づくりをサポートしたい」。熊本・大津高時代に学んだ「最後まであきらめない精神」、日本代表で培われた日頃の準備の大切さなど、プロ16年の経験を社会に役立てる。

◇  ◇  ◇  

15日の引退発表から一夜明けたこの日、紺色のスーツ姿で登場。「本音では、後悔はしていないが、やり残しはいっぱいある」と言いつつも、晴れやかな表情で会見に臨んだ。

実際には、引退を発表する直前まで「(引退回避は)今ならまだ間に合う」と葛藤していたとも吐露。クラブから何度も残留要請を受けたが「最後は自分で(引退を)決めた」と明かした。いったんハラを決めれば「覚悟はある」と言い切り、プロ16年で区切りをつけた。

常に最後まであきらめない全力プレーのスタイルを築いたサッカーへの情熱を、次なる舞台に注ぐつもり。今後は熊本地震の際、復興支援を目的に立ち上げたNPO法人「ユア アクション」をベースに、サッカー交流や講演などを行う意向だ。「子どもが夢を持ち、未来へ向かって挑戦できるような活動をやっていきたい。サッカーの監督もそうかもしれません」と目を輝かせた。

第2の人生においても「サッカーは人生のすべて」という経験を生かす。

例えば日本代表時代、06年W杯ドイツ大会でも一緒に戦い、昨季引退したGK川口や楢崎、DF中沢、MF小笠原から学んだのは、日頃からの準備の大切さだったという。

16年に熊本地震が発生した時も「しっかりした準備がないと災害ではもたないし、いざという時にもろさが出る」との考えで支援活動を行い、そのプロセスに役立てた。

大津高時代のサッカー部監督だった平岡和徳氏からは「最後まであきらめず、最後の1分、1秒まで誰かのために走る」ことを学んだ。泥臭くがむしゃらだったプレーのごとく、今度は社会に貢献する。【菊川光一】